研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22135004
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
研究代表者 |
西田 眞也 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 人間情報研究部, 主幹研究員 (20396162)
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研究分担者 |
内川 惠二 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00158776)
本吉 勇 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60447034)
藤崎 和香 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (20509509)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 質感 / 光沢感 / 色覚 / カラーディスプレイ / 透明感 / 画像統計量 / マルチモーダル / 触覚 |
研究概要 |
【視覚】静止画像情報から光沢感を得る際に利用される高次の画像特徴を多面的に分析した。液体や粘性の知覚において、運動の空間的な滑らかさや局所的な運動速度が重要な画像特徴となっていることを明らかにした。静止画像の動的変形により液体のような透明層が知覚されるメカニズムの解析を進めた。新しい残効現象を用いて視覚運動の空間的な情報処理の仕組みの分析を進めた。金銀銅色知覚、光沢知覚、および金属表面知覚との相互関係についての心理物理実験結果を解析し、金銀銅色知覚に及ぼす光沢感、色度、明度の影響についての論文発表の準備を行った。生後3-4ヶ月の乳児はまだ表面光沢の変化を知覚できない一方で,成人には知覚できない光沢の反射パタンを知覚できることを発見した(山口班と共同)。表面の細かな凹凸を見分ける視覚の分解能を測定し、それが画像の空間周波数やテクスチャ統計量による予測よりも有意に高いことを見出した。 【触覚】触覚振動情報の時間周波数処理に関して、異なる種類の機械受容器間の相互作用などを分析し、周波数融合などの新現象を発見した。 【クロスモーダル】複数の素材を棒で叩くCG動画に、複数の素材を実際に叩いた音刺激を組み合わせ、マルチモーダルな質感知覚がどのように変化するかを検討し、映像情報と音情報の双方に基づいた相補的なマルチモーダル材質知覚の原理を見いだした。また、視・聴・触覚による木の質感知覚について、延べ3か月にわたる実験を行い、50名のデータを取得した。また、色が温度感覚に与える影響を検討し、赤い物体ほど暖かく感じる温度が上がるというこれまでの常識に反する効果を発見した。 【新カラーディスプレイ開発】高輝度・高解像度の新型ハイパースペクトルディスプレイを開発した。開発したディスプレイは高輝度のためにリアプロジェクション型を採用できハイパースペクトル画像をより自然に観察できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚に関しては、光沢感、金属感、液体感の知覚メカニズムの解明が進んでいる。マルチモーダルな質感知覚については、材質知覚における視聴覚統合の原理を見いだし、論文が採択されたほか、視・聴・触覚による木の質感知覚についての研究が進んでいる。新型ハイパースペクトルディスプレイも性能評価の段階に入った。
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今後の研究の推進方策 |
【視覚:質感特徴知覚】光沢感、金属感、液体感の知覚メカニズムの分析を続ける。光沢感の分析においては形状復元のメカニズムとの関係に注目する。液体感に関しては、プロジェクションマッピングなどへの技術応用を視野に入れる。 【多感覚:素材感】材質知覚における視聴覚の相互作用を定量的に分析し、聴覚情報による視覚的特徴の知覚変容、またはその逆が生じるかとどうかを検討する。また、fMRIを用いて、心理実験で明らかになった視聴覚統合に基づく素材認識の神経メカニズムの同定を試みる。さらに視・聴・触覚による木の質感知覚について、物理量と低次質感知覚と高次質感認知との関連について検討する。 【視覚:手がかり情報利用のダイナミクス】 画像を観察する時間にともない質感判断の手がかりとなる情報がどのように変化してゆくかを検討する. 【新カラーディスプレイ】新型ハイパースペクトルディスプレイを用いて、通常のディスプレイの色域外の刺激の呈示を可能にし、美術作品等の表示のための可能性を図る。
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