研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22135005
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
中内 茂樹 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00252320)
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研究分担者 |
北崎 充晃 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90292739)
永井 岳大 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40549036)
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キーワード | 質感 / 物体認知 / 知覚学習 / 心理物理学 |
研究概要 |
今年度は、質感認知の中でも複雑でその特性がほとんど分かっていない材質識別に着目した。様々な材質で作られた質感サンプルの写真を刺激とし、材質識別能力と光沢感・冷暖感等の様々な質感特徴の関係性について検討した。実験では、呈示された写真に対し各質感特徴について7段階評定させた。加えて、写真を二つ同時呈示し、その材質同異判断に要する応答時間を計測し、質感評定値との関連性を解析することで、材質識別に関わる質感特徴を検討した。結果として、材質識別課題の応答時間帯により関連する質感特徴が異なることが明らかとなった。この時間特性は材質識別時の質感特徴抽出処理の複雑さに関する重要な手がかりとなる。また別の実験で、材質識別学習における対象質感特徴により他の視覚課題への学習波及効果が異なることも明らかとなった。質感特徴の時間特性と学習効果、写真の画像特徴を合わせて解析することで、材質識別に関わる画像特徴の解明につながると期待される。 また、質感認知の学習依存性に関して、真珠を刺激として検討を行った。具体的には、真珠評定の熟練者と非熟練者に真珠品質を評定させ、その特性の違いという観点から真珠評定の学習過程に関する考察を試みた。結果として、非熟練者でもそれなりに安定した評定が可能であるが、熟練者特有の評価特性(特定の真珠の評定値が非熟練者より低い、など)が観察されたことから、学習で獲得される真珠質感判断基準の存在が示唆された。また平行して、次年度以降に行う質感認知の環境依存性検討の準備として、真珠観察の照明環境を任意に設定できる箱形照明ブースを構築した。予備実験により、照明パターンによって真珠評定の安定度が変化することが確認された。この照明ブースを用いることで、真珠評定における環境依存性、さらには真珠評定の学習過程における環境依存性との相互作用に関する検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は1.質感サンプルの材質識別に関わる画像特徴、2.真珠評定に対する学習効果、を明らかにすることを目的とした。1.については、質感サンプルの写真を用いた実験により、サンプル材質を視覚情報に基づき分類する際の質感特徴間の時間特性の違いを明らかにした。2.に関しては、熟練者・非熟練者の違いという観点から、それら被験者群間に真珠質感判断基準の違いが存在することを明らかにした。これらは質感知覚に関わる物理特徴の詳細を調べる足がかりとなる重要な成果であり、おおむね順調に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
質感認知と画像特徴の関係性に踏み込むため、識別学習対象の質感特徴により他の視覚課題への学習波及効果が異なるという今年度の成果を活かし、様々な質感認知課題に寄与する画像特徴の抽出を試みる。具体的には、例えば光沢感と輝度歪度、透明感と輝度コントラストといった、質感認知との関連可能性が指摘されている画像特徴をピックアップし、質感認知課題の学習による各画像特徴に対する感度変化を計測することで、質感認知と画像特徴の関係性を定量化する。また、真珠評定においては、熟練者と非熟練者の違いをさらに明らかにすべく、真珠画像から様々な画像情報(色、光沢、表面粗さなど)を除去した際の評価特性を検討する。加えて、真珠質感評価の環境依存性を明らかにするため、開発した照明ブースを活用し様々な照明下での真珠評価実験を継続的に行う。
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