研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22135006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大澤 五住 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (20324824)
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研究分担者 |
佐々木 耕太 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (40467501)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大脳 / 初期視覚野 / 受容野 / 質感 / テクスチャー |
研究実績の概要 |
今年度の研究成果は以下の通りである。 1. 研究分担者の佐々木を中心とする研究では、一次視覚野神経細胞のテクスチャ受容野のプロファイルを両眼ともに新たに開発した方法により計測し、これらの細胞がテクスチャの両眼立体視情報処理に役立っているか検討した。記録した細胞の中には、テクスチャ受容野プロファイルが左右眼で異なる神経細胞が見られた。このことから、一次視覚野の神経細胞がテクスチャの両眼立体視情報処理に寄与していることが示唆される(ポスタ-:佐々木)。 2. Visual Fadingとして知られる、空間的に緩やかな輝度や色の変化を持つ静的な視覚刺激が一定時間の固視の後に我々の知覚上から消失する現象を、局所的なコントラスト感度の調整の視点から研究した。 3. 表面が持つ光沢感などは、多くの空間周波数成分の間の何らかの非線形的相互作用に担われていることが予想される。第一次視覚野(V1)細胞がよく反応する帯域外の空間周波数成分の影響を調べた結果、V1細胞は従来考えられていたより複雑なフィルター特性を持つことが明らかとなった(Ninomiya et al. JNP 2012)。 4. テクスチャの識別には空間周波数成分や方位の成分が物体表面でどのように分布しているかという情報が重要であるが、局所周波数領域逆相関法により、サルのV2野の細胞の受容野内部構造を調べた結果、一部の細胞で不均一な構造が見られ複雑な特徴の抽出がこの段階で始まる可能性が示唆された。(Tao et al. JNP 2012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度には、追加配分を受けたことにより、これまでのネコの視覚野からの記録に加えて、今年度開始したサルの初期・中次視覚野からの記録において、単一の電極を脳に刺入するだけでなく、多数の細胞からの同時記録のための準備を行う事ができた。当初計画のとおり、ネコではミシガン電極と呼ばれるタイプの多点電極を利用しているが、この多点電極は実験の都度挿入し、数時間後には取り外すタイプであり、サルでの記録には形状や脆弱性の点から最適では無いことが判明した。むしろ、慢性的埋め込みタイプのユタ多点電極を利用すれば、多くの細胞からの効率的同時記録が可能になるばかりでなく、この多点電極と従来の単一電極の併用により、これまでの手法に加えて、慢性埋め込みによる多点電極を使用するという、違った方向にも研究をすすめることになった。重点の掛け方には変更があったが、最終的にはより効率的な方法を開発する事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に問題なく進行しているので、ほぼ研究計画書の通りに今後も研究を推進していく。 追加配分によりユタ多点電極を購入できたので、単一電極とは反対側の脳半球あるいは同半球の単一電極とは異なる脳領野に慢性的にこの多点電極を埋め込むことにより、多くの細胞から同時記録として効率的なデータの取得を達成する。また、複数の記録部位からの同時記録が可能になることにより、記録部位間の情報伝達についても検討を行う。
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