研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22135006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大澤 五住 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (20324824)
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研究分担者 |
佐々木 耕太 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (40467501)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 視覚皮質 / 受容野 / 光沢 / 逆相関法 / ガボール ウェーブレット |
研究概要 |
今年度の研究成果は以下の通りである。 1. 光沢やテクスチャー等の質感の知覚には、両眼視差を含む両眼情報の重要性が知られている。初期視覚野においては、これまで研究代表者が提案した視差エネルギーモデルが、視差選択性をもつ複雑型細胞のモデルとして広く使われて来たが、このモデルでは細胞の視差選択性の反応の説明が不十分であることも知られている。この原因が、モデルの持つ前段細胞のプーリングの評価が不十分であるとの仮説を提案し、その検証実験を行なった。この結果、 視差エネルギーモデルを要素とする機能ユニットを空間周波数のバンドの領域で数個程度までプーリングしている細胞を発見した。このようなプーリングは、疑似対応点の排除に役立つことから、視差情報をより正確に表現する細胞特性の生成機構への示唆が得られた。 2. 佐々木を中心とする研究では、一次視覚野神経細胞がテクスチャの両眼立体視情報処理に役立っているか検討した。記録した細胞の中には、テクスチャ受容野プロファイルが左右眼で異なる神経細胞が見られ、一次視覚野の神経細胞がテクスチャの両眼立体視情報処理への寄与が示唆される。論文作成に十分な細胞数が得られた。 3. サルのV1, V2における周波数成分間の相互作用を調べるための、新たな刺激を開発した。この刺激は「ランダム ガボール ウェーブレット刺激」で、任意の動画像を表現可能な時間空間領域でのウェーブレット基底関数から、ランダムに選んだ一定数のウェーブレットを線形加算して作成した刺激である。この刺激に対するV1, V2野の細胞の反応の記録が大きく進行し、現在数10個の細胞からのデータが得られた。データの解析法を現在開発中で、今後はその結果を取りまとめる作業も行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネコ、サルにおける初期視覚野での記録実験をコンスタントに実施しており、今年度はこれまで以上に新たなデータを取得することができた。また、新しい刺激と解析法を可能にする「ランダム ガボール ウェーブレット刺激」を考案し、実際にそれらを使ってサルのV1, V2野でデータを取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は最終年度であることから、最後のデータ取得に向けて、実験回数を30%程度増やし、必要な細胞数のデータを取得する。また、これらの実験から得られたデータについて、新しい「ランダム ガボール ウェーブレット刺激」については、現在光沢感のベースとなる可能性がある多数の周波数成分間の相互作用の解析法を開発中である。この解析法を確立し、解析を行なう。 全てのプロジェクトについて、論文の取りまとめと執筆を行い、国内・国外の学会において発表する。
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