研究実績の概要 |
本課題の平成26年度の主要な成果は以下の通りである。1. 時空間ガボールウェーブレット領域での逆相関法を開発した。本解析方法をサルV1, V2, MT野の細胞に適用した。V2野神経細胞は、最適方位と直交する方位でV1野神経細胞よりも強い抑制応答を示した。また、MT野神経細胞はこれら3領野の中で最も強い抑制応答を示し、最適運動方向とは反対方向から最も強い抑制を受けていた。(橋本ら) 2. 視覚世界はブロードバンドな空間周波数スペクトルを持つ。本研究では、V1においてこういった複数周波数チャンネルからの情報統合が起こっているかを調べた。解析の結果、眼間位相差が周波数に対して比例するような特性をもつ複雑型細胞が見つかった。また、単純型細胞においてはこの性質は見られなかった。(馬場ら) 3. 奥行方向に傾いた面の情報を表現するとみられる、両眼方位視差(IOD)情報の両眼統合を行なう細胞がV1に存在することを発見した。従来の視差エネルギーモデルを拡張し、同一の最適IODをもった複数方位チャンネルが統合されるモデルと整合する。(加藤ら) 4.質感情報は複数の細胞の反応に担われるとの仮説の検討のため、多点電極により多数のV1細胞から同時記録を行い、発火の相互関係を調べた。相互相関解析と細胞の方位・空間周波数特性の計測により、皮質内での水平および垂直方向への情報伝達の時間経過を示す計測結果を得た。 (Tanaka et al. 2014) 5. サル弱視モデルにおいて片目に画像のボケを与えた生育環境の影響について、個々のV2細胞の方位・空間周波数選択性を調べた。LSRC法により検討した結果、正常サルと比較して、画像ボケにより受容野内の選択性の一様性の乱れが生ずることを明らかにした。 (Tao et al. 2014)
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