研究領域 | 統合的多階層生体機能学領域の確立とその応用 |
研究課題/領域番号 |
22136004
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
天野 晃 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60252491)
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研究分担者 |
嶋吉 隆夫 (財)京都高度技術研究所, 研究部, 副主任研究員 (60373510)
國枝 義敏 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (90153311)
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キーワード | 生体生命情報学 / 細胞モデル / モデル記述言語 / 心臓モデル / 自動並列化 |
研究概要 |
平成23年度は、まず、臓器モデル記述系の改良として、問題を二つに分割し、それぞれについて記述言語の設計とシミュレーションコード生成系の実装を検討した。まず、臓器モデルとして空間的な広がりがあるものを想定した場合に必要になる分布定数系モデルの記述について検討を行った。分布定数系モデルの記述は、世界的にもデファクトスタンダードとなるものは提案されていない状況であるが、本研究では、集中定数系モデルと同様に、空間微分も含む構成方程式をモデル記述の基盤として用い、昨年度提案した時間方向への離散化スキームと同様に空間方向への離散化スキームを適用することで、時間と空間方向に離散化された数式セットを生成する手法を提案した。この方法を用いると、モデル式は漸化式形式で記述された数式集合になるので、境界条件である臓器形状や実験プロトコルと親和性が高く、柔軟で汎用性の高いコード生成系の実装が可能である。この点については、次年度に本格的に取り組む予定である。次に、複数臓器間の相互作用や、時間スケールが異なる臓器内現象を扱う場合に必要になる連成計算スキームの記述を検討した。昨年度提案した時間方向への離散化スキームでは、一つの微分方程式系を対象とした時間発展のみを扱うことを想定していたが、連成計算スキームでは、複数の時間軸の計算が必要である。この問題を数学的に記述するため、漸化式形式を利用した連成計算スキームの記述系を提案した。この方法を用いると、複数の細胞モデル、臓器モデルに含まれる変数について、どのような順序で、どのような時間ステップの計算を行うかを数学的に記述することが可能である。この設計を利用して薬物動態モデルと心臓循環モデルの連成計算等が記述可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界的にも臓器レベルのモデル記述系は有効なものが提案されていない状況であるが、本研究で提案した記述系は、細胞モデル記述言語で著名なCellML Workshopでも好評であり、実際に計算可能な記述系としてかなり注目を集めている。想定される全てのモデル構造に対するコード生成が可能な汎用性は達成できていないが、本領域で想定されている臓器モデルの記述とコード生成はおおむね設計は完了しつつあり、実装も計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、臓器に関する分布定数系モデルの記述系はおおむね完了したので、今後、このモデル記述に対して、各種の時空間計算スキームを適用可能であるかどうかをテストし、数学的な時空間離散化数式セットの導出アルゴリズムを実装していく。また、提案した漸化式変数依存関係解析を用いたシミュレーションコード生成系について、空間方向の離散化に関する実装も進めていく予定である。さらに、現在は、単一CPUとGPUを利用したシミュレーションコード生成のみを実装しているが、実用的に重要が高いクラスタ型PCを用いたMPI並列コードの生成とその最適化も実現していく予定である。
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