すべての生命現象は個々の物理化学的な相互作用の集積でできあがっており、マクロな生理学的現象を理解するのにも分子レベルの理解が欠かせない現象は多い。本研究では、マクロなレベルの生理現象の理解のための分子レベルの振る舞いの研究を行う。具体的には、分子論的なシミュレーションが十分になされていないヒトのチャネルタンパク質のモデル構築からスタートし、分子シミュレーション及び、一階層上のイオンの透過率の定量的計算までを行う基盤を確立し、薬剤やアミノ酸の点変異がイオンチャネルのマクロな機能に与える影響を明らかにする事をめざす。本年度は、hERGチャネルタンパク質のモデリングを行い、MDシミュレーションを開始した。また、モデルである影響を評価するために、実験で構造の解かれたkv1.2の構造を用いたシミュレーションも行った。すでに100nsecを超えるシミュレーションを行ったが、両タンパク質共にイオンの透過率が低く、有意な個数のイオンの透過を確認できていない。そこで、電圧を掛けたシミュレーション、カリウムイオンを増加させたシミュレーションも開始しすると同時に、シミュレーション条件(温度や膜分子組成、電圧など)をより広い範囲で探索し、多くのイオンが透過する条件を探索する。 一方平行して、より長時間のシミュレーションに適したブラウン動力学シミュレーションの準備を始めた。プログラム自体は連携研究者の中村春木教授らが開発した物を利用して、木下らが新学術研究全体でのデータやり取りのためのインターフェースの構築を行っている。3月中にインターフェースの構築を完了する予定であったが、3月11日の震災の影響で、完成が遅れているが、次年度の早い段階での完成を目指している。
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