研究実績の概要 |
本グループでは、チャネルタンパク質のイオン透過率を分子レベルのしミレーションを用いて定量的に計算する手法の開発を行い、多階層生態機能の分子基盤での方法開発を行ってきた。まず、既に構造が解かれているタンパク質としてKv1.2を対象として、長時間MD(分子動力学法)でデータを行い、その結果を情報科学的に解析する新しい手法(状態遷移グラフ解析)の開発を行う事ができた。当初、MDの先としてBD(ブラウン動力学法)での透過率の見積もりを想定していたが、より簡便にかつBDモデル特有の恣意性を入れる事無く計算できる手法となる可能性が見えてきた。最終年度はこれまで開発を行ってきた基盤を活用し、Kv1.2を対象とした変異体を作成し、上位階層へと渡す電流電圧特性の計算を行った。具体的には、既に実験的に電流が増加することが確認されている変異体(P407D)でのシミュレーションで電流増加の分子的メカニズムの解明を行い、さらに実験的にはまだ表現型が明らかではないD352S, D355Sの変異導入による効果の検討を行った。その結果、イオン透過が起こっている際にも、フィルター領域の狭窄によりイオン透過率が一時的に減少することが観察し、その一時的な狭窄がShakerタンパク質で報告されているイオンが通過しなくなる変異体で起こっている現象と酷似していることを見いだした。現在、これら一連の変異体シミュレーションの解析結果を論文にまとめているところである。 また、新学術領域内の連携推進の一環として大阪大学の岡村先生らとVSOPのシミュレーションによる分子機能の解析を進めたり、大阪大学の藤原先生らとアンキリンと膜との相互作用の解析を行った。特に後者の解析では、粗視化モデルとしてMartini力場を利用し、総計110μ秒に及ぶ長時間のシミュレーションを行うことができた。
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