薬物(低分子化合物)-蛋白質相互作用のモデル理論を実験科学的に検証することは本領域研究の成功に必要不可欠である。本研究ではその検証ツールとなる低分子化合物の多種多様な置換誘導体合成を考慮した高効率的迅速合成法の開発を行うとともに、合成した低分子化合物群を効率的に供給することで本領域研究に貢献する。その目的の実現に向けて、研究最終年度にあたる平成26年度は、以下の成果を得た。 合成した低分子化合物群の供給を通じた本領域内での共同研究を引き続き、複数の計画班や公募班と行った。一方、共同研究と並行して、様々な低分子化合物の供給に即座に対応すべく、新規合成方法論の開発も検討した。研究実施計画に基づき、核酸アナログを主とした生体ミミック分子の新規合成法の開発に成功するとともに、新規骨格を有する核酸アナログの効率的合成も達成した。また、本領域研究の有力な標的となり得る含窒素複素環化合物の合成法の開拓も行った。さらに、ラジカル種の活用を鍵とする有機合成手法の開拓とその応用研究を推進し、新規ラジカル環化並びにラジカル窒素官能基化手法の開発に成功した。これらの新手法を駆使し、高度に官能基化された複雑な化学構造を有する抗生物質並びに抗腫瘍活性天然物等、興味深い生物活性を示す天然由来の低分子有機物質の全合成を達成した。以上の成果により、本新学術領域の発展に資する低分子迅速合成の新たな手法と戦略を開拓することができた。
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