研究領域 | 統合的多階層生体機能学領域の確立とその応用 |
研究課題/領域番号 |
22136007
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
蒔田 直昌 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00312356)
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研究分担者 |
前村 浩二 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (90282649)
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キーワード | 致死性不整脈 / 伝導障害 / ギャップ結合 / プロモータ / SCN5A / iPS / エクソーム |
研究概要 |
進行性心臓伝導障害(PCCD)の本邦発端者49名の遺伝子解析を行い、心筋NaチャネルSCN5A(9)、心筋KチャネルKCNH2(1)、ギャップジャンクションのconnexin40(Cx40)遺伝子GJA5(1)、拡張型心筋症の原因遺伝子である核膜タンパクラミンA/C LMNA(9)の変異を同定した。N2A細胞に発現させたCx40-Q58Lのコンダクタンスは、正常の1/10に低下し、プラーク形成能が障害され、細胞膜上にびまん性に発現しており、ヒス・プルキンエ細胞のギャップ結合の電気生理学的特性とトラフィッキングの異常によって、刺激伝導系に特異的な障害がもたらされていると考えられた。また、SCN5A変異のうち1例はプロモータ領域の変異で、Luciferase法で測定したSCN5A転写活性が大きく低下していた。 A2-5班との協力によって、QT延長徴候群のうちSCN5A変異を持つ本邦LQT3登録症例のうち、pore領域の変異に直目し、パッチクランプ法で解析した機能異常と臨床像を比較検討している。Pore領域以外の変異と比較することによって、QT延長のメカニズムや臨床的重症度のとの関連を明らかにしようと考えている。 また、最近慶応大学の福田グループとの協力で、SCN5A変異E1784KのヒトiPS心筋細胞のNa電流と活動電位測定を行っている。従来の非心筋細胞を用いた解析法では、活動電位などの生理学的解析や薬理学的研究は不可能だったが、iPS心筋細胞を用いることによって、より生理的な条件で、患者特異的な分子病態メカニズムや新たな薬剤の効果を検討することができる。 さらに、これまでの候補遺伝子解析で同定されなかった致死性不整脈家系の原因遺伝子を同定するために、国立遺伝学研究所、東京大学、フランスINSRMとの共同研究でエクソーム解析を開始している。本研究によって致死性不整脈の未知の病因の解明が可能とれば、変異の機能解析やA01班の進める生体シミュレーションと有機的に連携することによって、不整脈の統合的理解が急速に進むと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cx40の変異に関する業績は本年Circ AE誌に発表することができた。Cx40の変異は循環器領域における初めて同定されたギャップ結合変異で、イオンチャネルの機能構造連関という意味でも臨床的医学的な意味においても重要な研究である。PCCDの病因に関する研究は国際的にもあまり進んでおらず、今後PCCDの原因遺伝子と分子病態を解明することは極めて重要と思われる。これらの研究を通じて、早急にA01班との連携を進め、生体シミュレーションの研究を展開したい。
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今後の研究の推進方策 |
本年から長崎大学に大学院生が入学し、コンピュータシミュレーションを学ぶために、A2-5班の中沢研究室に国内留学する予定である。遺伝学的研究・電気生理学的研究とシミュレーションの有機的連携を促進できると期待している。エクソーム解析に関してはすでに、国立遺伝学研究所、東京大学、フランス INSRMとの共同研究を開始している。
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