研究領域 | 統合的多階層生体機能学領域の確立とその応用 |
研究課題/領域番号 |
22136007
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
蒔田 直昌 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00312356)
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研究分担者 |
前村 浩二 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90282649)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 致死性不整脈 / 心臓伝導障害 / コンピュータシミュレーション / エクソーム / iPS / 遺伝子変異 / ギャップ結合 / 国際情報交換(フランス) |
研究実績の概要 |
当計画研究では本年度、以下の3項目の研究を行った。 ①プルキンエ不整脈のコンピュータシミュレーション:研究代表者は以前、突然死2名を伴う進行性心臓伝導障害障害(PCCD)1家系に、コネキシン40 (Cx40)の変異を同定した。Cx40はプルキンエ線維(PF)に強く発現するギャップ結合(GJ)である。PCCDにおいてPF起源の重症不整脈が発生する機序を解明するため、A2-5班との共同研究によって、樹状に配列した刺激伝導系細胞に心室筋細胞を結合させたモデルを作成し、コンピュータシミュレーションを行った。その結果、1)PFでは一方向性伝導ブロックがなくてもリエントリーが発生しうること、2)リエントリーの発生を規定するものネットワークの構造とGJコンダクタンスであることを解明した。 ②家族性致死性不整脈の網羅的遺伝子解析:16家系の家族性重症不整脈のエクソーム解析を行った。疾患名(家系数、インフォマティックス解析で絞った候補遺伝子数)は、PCCD(2家系、4遺伝子)、ブルガダ症候群(12家系、4遺伝子)、特発性心室細動(1家系、2遺伝子)、家族性洞不全症候群(1家系、2遺伝子)である。候補遺伝子のほとんどは、これまでに報告のない新規遺伝子である。現在、それぞれの候補遺伝子について患者母集団を大きくして変異スクリーニングを行うとともに、一部の変異については、細胞発現系やiPS細胞を用いて、パッチクランプ法で機能解析を行っている。 ③iPS心筋細胞を用いた致死性不整脈の病態解析:PCCD 1家系,特発性心室細動 1家系のiPS心筋細胞を作製した。現在、心筋細胞活動電位の測定、96点多電極アレイにまいたiPS心筋細胞のフィールド電位伝播の可視化、Na電流・Ca電流の計測を行い、解析中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一方向性ブロックはリエントリーの発生の必須のメカニズムと考えられてきたが、今回作成したPFモデルでは、必ずしも一方向性のブロックがなくてもリエントリーが発生しうるという新知見を得た。遺伝性不整脈では多くの12個の新規候補遺伝子がリストアップされており、近日中に最終的な原因遺伝子の特定も可能と思われる。特発性心室細動のiPS心筋細胞ではすでに活動電位の異常が明らかになっており、今後の研究継続によって詳細を明らかにできると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
①②は、これまでの研究をさらに推進し、最終的な結論を得る。特にPCCDについては、多くの登録症例を持っているフランスINSERMとの共同研究を進めており、今回リストアップされた遺伝子について、欧米PCCD家系を含めた多くの症例で遺伝子解析することによって、疾患遺伝子として確立させる。③については、iPS心筋細胞の独特の問題点を克服することが重要な課題である。すなわち、細胞の幼若性や、不均一性(結節型・心房型・心室型)が電気生理学データの解釈の問題となる。これまでの研究では、パッチクランプ後に単一細胞のRT-PCRで細胞のタイピングをする方法がとられているが、現実的には極めて困難である。我々はこれに代わる手法を考案し、現在試作品を作っている。この手法が完成すれば、毎回電流測定後に毎回単一細胞のRT-PCRでタイピングするという手間は省け、データ取得後、一度でタイピングすることが可能になる。
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