核内受容体群は、固有のリガンドと結合することにより特異的な遺伝子の転写活性とタンパク質の量的な変動を引き起こし、発生、代謝、恒常性といった生命維持の根幹に関わる現象を厳密に調節している。すなわち、核内受容体リガンドは細胞階層における状態変動を起こし、より上位の各階層における機能制御に密接に関わっている。核内受容体機能制御分子の創製とバイオプローブ開発を基盤として、核内受容体が発揮する多彩な生物機能に関する理解と制御を目的として、本年度は以下の項目を行った。 1)レチノイド核内受容体RXRは様々な核内受容体とヘテロダイマーを形成する。各種ヘテロダイマー機能の制御を目的として、新規RXRリガンドを設計、合成した。 2)種々の不飽和脂肪酸類が幾つかの核内受容体に結合し、その機能を制御していることが報告されているが、その活性は弱く、生理的意義もわかっていない。そこで、不飽和脂肪酸に官能基を導入した化合物や二重結合に対するバイオアイソスターを導入した誘導体群を合成した。 3)カルボランを脂溶性ファーマコフォアとした核内受容体リガンドの創製を行った。その結果、高活性なカルボラン含有ビタミンDアゴニストをみいだし、複合体の結晶構造解析により、その受容体結合様式を明らかとした。また、変異した受容体にも有効なアンドロゲンアンタゴニストの創製にも成功した。 4)核内受容体研究に有用な蛍光プローブの開発を目指し、会合状態の変化によって蛍光特性を変化させる系を設計、合成し、その機能を明らかとした。
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