研究領域 | 統合的多階層生体機能学領域の確立とその応用 |
研究課題/領域番号 |
22136013
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
影近 弘之 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (20177348)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核内受容体 / 遺伝子転写制御 / ファーマコフォア / カルボラン / アダマンタン / ビタミンK / プロゲステロン / 蛍光性リガンド |
研究実績の概要 |
核内受容体は、固有のリガンドと結合することにより特異的な遺伝子の転写活性とタンパク質の量的な変動を引き起こし、発生、代謝、恒常性といった生命維持の根幹に関わる現象を厳密に調節している。すなわち、核内受容体リガンドは細胞階層における状態変動を起こし、より上位の各階層における機能制御に密接に関わっている。核内受容体機能制御分子の創製とバイオプローブ開発を基盤として、核内受容体が発揮する多彩な生物機能に関する理解と制御を目的として、本年度は以下の項目を行った。 1)ユニークな核内受容体リガンド開発のための新規ファーマコフォアの探索:これまでに、核内受容体リガンドの脂溶性ファーマコフォアとしてホウ素クラスターであるカルボランの有用性を明らかにしてきた。今回、カルボランを用いた新規アンドロゲン、プロゲステロン受容体リガンドを創製するとともに、新たにアダマンタンを基本骨格とする化合物を設計、合成した.その結果、プロゲステロン受容体リガンドにおいて、アダマンタンがカルボランとほぼ同様の機能を有することがわかった。 2)ビタミンKの酸化誘導体の創製:ビタミンKは骨組織や血管内皮細胞の石灰化作用を担う脂溶性ビタミンであるが、最近、様々な未知の作用を有している可能性が示唆されている。一方で、他の脂溶性ビタミンと比べて代謝生成物の同定や機能が明らかとなっていない。本研究では、ビタミンKの推定代謝物として側鎖酸化物を設定し、その合成方法を確立し、側鎖長の異なる各種酸化誘導体を系統的に合成した。 3)核内受容体の蛍光性リガンドの創製:昨年度に続き、プロゲステロン受容体の蛍光性リガンドの開発を行い、結合親和性、選択性、蛍光量子収率の向上した化合物を見いだした。本知見は、他の核内受容体の蛍光性リガンド創製に重要な情報となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核内受容体の機能を制御するリガンド分子や解析を目的とした分子プローブの創製については、順調に進んでおり、既知化合物とは構造や物性が異なり、かつユニークな生物活性を有する化合物が見いだされている。今後は、これまでに創製したリガンドや分子プローブを用いて、核内受容体が発揮する多彩な生物機能に関する理解と厳密な制御に向けた研究展開を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、これまでに創製した各種核内受容体リガンドや分子プローブの構造最適化を行うとともに、新たな構造の探索を進める。核内受容体の多彩な生理機能を選択的に発揮する化合物及び抑制する化合物、ならびに、機能解析のための蛍光性プローブを開発し、それらを用いた各種核内受容体の機能解析を進める。本新学術領域研究の他の研究グループとの連携を強化し、研究を推進して行く予定である。
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