研究領域 | 人工翻訳後修飾:neo-PTMsが造る細胞内ケミカルネットワーク |
研究課題/領域番号 |
22H05019
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
五月女 宜裕 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (50431888)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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キーワード | neo-PTMs / 翻訳後修飾 / 生理活性分子 / 生物活性分子 / 酵素 / 質量解析 |
研究実績の概要 |
生命は、DNA・RNA・タンパク質・代謝物質などの分子間相互作用ネットワークにより制御される。これらの階層間ネットワークの制御には酵素を介した化学反応が重要な役割を果たしており、その破綻は疾患と密接に関連する。本研究では生体が元来備えていない人工的修飾、あるいはその存在が不明な内在性修飾をneo-PTMsとして定義し、これにより引き起こされる階層間シナジー変化を理解しそして制御することを目指している。 我々は、天然のメチル源ミミックProSeAM (Propargylic Se-adenosyl-l-selenomethionine) を用い、タンパク質基質に人工的目印を導入する方法を発信してきた。特に、KO細胞の抽出液に対して、ProSeAM/リコンビナント酵素の添加、SILAC (stable isotope labeling by amino acids in cell culture) を組み合わせたPMS (ProSeAM/MTase/SILAC) 法を確立することで、より精度高くneo-PTMsを探索することが可能となった。本年度は、PMS法を駆使してリボソームタンパク質RPL3、ヒスチジン3位 (タウ位) にプロパルギル基が導入されることを見出した。またこのneo-PTMsが生体のメチル化反応を再現していることを示した。さらに共同研究を通じて、メチル化はチロシンコドンでの翻訳の速さの調節・新生ポリペプチド品質管理に重要な役割を果たすことが示唆された。また、酵素は触媒毒にならないことに着眼し、複数の酵素を添加することでneo-PTMs導入効率を向上させる新手法についても重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
neo-PTMs導入技術をさらに発展させるための新展開において重要な知見が得られた。また、A03班を含む複数の共同研究を推進することで、メチル化によるチロシンコドンでの翻訳の速さの調節・新生ポリペプチド品質管理についての成果を発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、独自の方法論を基盤としてneo-PTMsの導入、探索、制御研究を推進する。メチル化関連酵素阻害剤は、創薬ターゲットとして注目を集めるが、人工修飾という視点において、関連する低分子と酵素との構造と活性の相関は未だほとんどわかっていない。人工修飾反応を導入するために重要な構造情報の抽出について焦点を当てる。また共同研究をさらに発展させ、neo-PTMs導入・探索をさらに加速させるとともに、あらたな生物学的機能の発見・創出を計画的に実践する。
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