研究領域 | 生物地球化学タグによる回遊履歴復元学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H05028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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研究分担者 |
松林 順 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (30756052)
坂本 達也 東京大学, 大気海洋研究所, 海洋科学特定共同研究員 (80869165)
浅沼 尚 京都大学, 人間・環境学研究科, 講師 (90852525)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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キーワード | 同位体 / 回遊指標 / 代謝指標 / 食性指標 / 地球化学 |
研究実績の概要 |
血液と筋肉の水分の酸素同位体比が数時間から数日スケールの経験塩分履歴の指標となることを,天然サンプルの分析と飼育実験から明らかにした.また,伊勢湾から採取された魚試料の肝臓の希土類元素パターンが回遊生態履歴の有効な指標となる可能性が示された. 放射性炭素同位体比の空間分布地図作成においては,これまでに収集した1993年以降のDICの放射性炭素同位体比データベースに最新の論文の情報を加え,さらに表層におけるサンゴの時系列分析値を統合し,合計で4,824点のデータを収集した.また,Copernicus Marineより1993年1月から2020年12月までの毎月分の全休を対象とした物理・生物地球化学データを入手した.最終的に,放射性炭素同位体比の時空間的なばらつきをこれらの物理・生物地球化学データ(9種類)で説明する時空間統計モデルを構築し,月ごとに全休スケールで放射性炭素同位体比の変動を予測する空間分布地図の作成に成功した. 水晶体の安定同位体比を用いて,2021-2022年に北太平洋西部と縁辺海で採取したソデイカの異動・回遊様式を調査した.水晶体から得られた同位体履歴から,体サイズに依存して栄養段階が上昇する影響を除去することで,生息海域の同位体ベースラインの履歴を推定した.これを,実際に観測されたPOMの空間変動と比較して,移動履歴を推定した.推定ベースライン履歴は,生活史初期に変動があり,成魚期には安定することから,幼生期には海流輸送によって大きく移動する一方,成体には長距離回遊を行わない可能性が示された.日本海・東シナ海に生息するソデイカの多くは亜熱帯循環の外側に起源を持つが,亜熱帯循環内のソデイカは様々な起源を持ち,同種が複雑な混合パターンを持つことを明らかにした.同位体履歴とベースライン同位体地図との組み合わせは,多くの頭足類や魚類の管理に有用であることを示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい指標の開発や,他班との連携も効果的に進んでおり,複数の論文業績の目処も立っており,おおむね順調に進捗していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は最終年度となるため,これまで進めている他班との連携研究をより加速させつつ,A02班が中心となって開発した手法についても他班との連携を開始し,さらなる分野融合研究を推し進める.
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