研究領域 | アプタマー生物学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H05038
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
塚越 かおり 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20708474)
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研究分担者 |
山岸 彩奈 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00778293)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2026-03-31
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キーワード | アプタマー / 酵素活性 / タンパク質間相互作用 / 脳内ホメオスタシス |
研究実績の概要 |
本領域研究の狙いは、DNAなどの核酸から成るリガンド・アプタマーの特異的な相互作用によって標的タンパク質の活性や相互作用を直接制御し生体に応用することで、未知の生命現象の解明のための新規な生物学研究アプローチを確立することである。本研究期間では、脳内の恒常性維持に関わる新規メカニズムを標的としており、C01計画班(本研究課題)は機能制御アプタマーの開発とマウス生体内での応用を目指している。 本年度はA01計画班、B01計画班と連携し、脳の恒常性維持機構に関わるタンパク質分解・タンパク質間相互作用の制御を担う新規アプタマーの開発を行った。具体的には、異常凝集するペプチドであるAβを分解するプロテアーゼであるKallikrein-related peptidase 7(KLK7)の酵素活性を増強するアプタマーと、タンパク質間相互作用により細胞保護/細胞死の調整機能を担うとされているneuronal nitric oxide synthase(nNOS)、C-terminal PDZ ligand of nNOS(CAPON)に結合するアプタマーを開発した。KLK7、nNOS、CAPONの組み換えタンパク質を大腸菌を用いて調製あるいは購入し、それぞれのタンパク質への結合親和性を指標にDNAライブラリからアプタマーを探索した。結果、KLK7、nNOS、CAPONに結合するクローンを同定することに成功した。いずれのタンパク質も脳内恒常性維持に重要なタンパク質であり、それらに対して結合する世界初のアプタマーの開発例となる。また、細胞保護/細胞死のトリガーとなるCAPONとnNOSの複合体形成がアプタマーによって神経細胞内で誘導できるかを評価するため、研究分担者と協力し、アプタマーによる細胞内CAPON-nNOS複合体形成促進の観察実験を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた3つの標的タンパク質に対して結合する新規DNAアプタマーの取得に成功している。酵素活性を示すKLK7の組み換えタンパク質や、CAPON-nNOS複合体を観察するためのin vitroアッセイ、遺伝子改変細胞の構築も全て完了した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に立ち上げたKLK7の酵素活性測定法、CAPON-nNOS複合体形成量のin vitroにおける観察法、遺伝子改変細胞を用いた観察法を駆使して、獲得したアプタマークローンの中から標的酵素の活性・タンパク質間相互作用を促進するアプタマーを同定する。活性増強を示すクローンが得られたら、マウス脳内へ導入してin vivoでも標的タンパク質の活性を制御可能か評価する。もし十分に活性増強の効果が得られない場合は、変異アプタマーを作成するなどして機能向上を試みる。
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