研究領域 | 構造不規則系のレオロジー:アナンケオン動力学の確立 |
研究課題/領域番号 |
22H05040
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
岩下 拓哉 大分大学, 理工学部, 准教授 (30789508)
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研究分担者 |
長屋 智之 大分大学, 理工学部, 教授 (00228058)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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キーワード | 電気伝導度 / pH / ゼータ電位 / 荷電シリカ分散系 / 粘度 / レオロジー / 電気粘性 / コロイド結晶 |
研究実績の概要 |
ナノ・マイクロサイズの荷電コロイド粒子が溶媒中に分散した荷電コロイド分散系は,多彩な外場応答性をもつ機能性流体である.コロイド懸濁液の粘度を高精度に制御するためには,溶液やコロイド粒子の電気的物性を正確に測定し,流動特性の定量評価,サンプル調整法を確立する必要がある. 令和4年度は,120 nmのシリカ粒子が水に分散した水溶液性サンプル調製方法を実現し,その物性の評価を目的とした.サンプル調製においては,純水による透析やイオン交換による脱塩処理,イオンクロマトグラフィーによる不純物評価,水分計を用いた粒子体積分率の評価方法,高温蒸発と除湿による濃縮方法を実施・確立した.物性評価としては,サンプルの電気伝導度,pH, 回転粘度計とレオメーター による粘度,ゼータ電位測定を基本的特性とし,それらの測定を温度15℃の環境で実施した.特に,溶媒中に添加された電解質を含まないSalt-freeサンプルに着目し,その物性評価を実施した.また,理論的な化学平衡式から,表面基の解離定数や表面密度を見積もる検討を行った.さらに,NaOHを添加した場合のシリカ溶液の電気伝導度やpH曲線を測定し,先行研究で得られた実験結果を再現することができた.このように,次年度の目標であるレオロジー測定のためのサンプル調製方法の確立が完了した. 一方,ワークステーションを用いたブラウ二アン動力学計算を用いた計算では,塩添加の効果をモデル化した有効ポテンシャルを用いて,薄い粒子濃度でさえ液体・ガラス転移の挙動を観測できるのかの検証を行った.結果,単成分の場合は,粒子の結晶化が起きてしまい,ガラスではなく高粘度の液体的挙動のみが再現できた.ガラス的な挙動を観測するためには,多成分への拡張や急冷のような外的処理が必要である必要があり,これは実験的研究へフィードバックという形で活かすことができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
荷電コロイド分散系のサンプル測定手法を確立し,その基本物性(pH, 電気伝導度,ゼータ電位,粘度)の測定のために実験装置整備および測定を達成することができ,本年度の目的を達成できた.シミュレーション研究では,計算コード作成から計算結果の解釈に至るまで、その基本設計を完了することができ,次年度での解析が可能になった.コロイド粒子の詳細な解析を行うには至らなかったが,全体的な実施項目の達成度から今年度の研究は順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の目的は,今年度作成した荷電シリカ分散系のレオロジーを精密測定し,小角散乱実験によりその構造測定をすることである.ラボ用小角X線散乱を用いて構造測定し,さらに放射光を用いた小角X線散乱で高精度な測定を実施する予定である.また,レオロジーと分散液の基本的特性の間に成り立つ関係式を実験的に見出し,計算機シミュレーションでミクロな描象を創出することを目標とする.さらに,変形のスタートアップ状態に着目し,金属ガラスの弾塑性変形とのアナロジーについて知見を得る.
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