研究領域 | 精密高分子による次世代医薬開拓 |
研究課題/領域番号 |
22H05049
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉本 敬太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60392172)
|
研究分担者 |
長野 正展 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (00771619)
|
研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
|
キーワード | 核酸 / アプタマー / 血液凝固 / 高感度分析 / トロンビン / 低分子薬 / 核酸医薬 |
研究実績の概要 |
(1) DNA-encoded Chemical libraly (DEL) を使用した低分子リガンドのin vitroセレクションの選抜工程において、独自に開発したMicrobeads-assisted capirally electrophoresisi (MACE) 法の有用性を調査した。植物ホルモン受容体タンパク質に対してMACE-DELを適用した結果、MACE分離の方が通常の洗浄分離よりも高い分子の濃縮効果が観測された。 (2) MACE-SELEX法で獲得した抗トロンビンDNAアプタマーM08sをもつ二価化アプタマーを開発し、M08sとTBA29を連結したPse(08-29)が強力な抗凝固活性を示し、M08sと既存の低分子薬であるアルガトロバンを凌駕した。また、同抗凝固活性は30塩基の相補鎖配列で中和されることが確認され、急性期血液療法の新薬として有望であることが示唆された。 (3) 上記2で使用したGリッチオリゴヌクレオチドM08s-1は、高い抗凝固活性を持つアプタマーであり、トロンビンとの相互作用の特徴を示す。X線結晶構造解析の結果から、グアニン四重鎖のドメインと長い二重鎖モジュールがねじれ構造を形成しつつ、トロンビンのエキサイトI領域と相互作用することが明らかになった。同構造は他の抗エキサイトIアプタマーには見られないものであり、M08s-1の抗凝固活性の向上を説明する重要な要素であると考えられる。 (4) MTXに特異的で強力に結合するDNAアプタマー(MSmt7)を用いるバイスペシフィックアプタマーを開発し、DNAのローリングサイクルリアクションを利用する低コストで信頼性の高い高感度な抗がん剤検出法を構築した。 (5) DNA四重鎖中のグアニンカルテット構造を形成するグアニンの同定法として、融解温度測定とCDスペクトル測定を併用する手法を開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、アプタマーライブラリー以外の分子ライブラリーに対するMACE法の適用を確認することが目標であった。「研究実績の概要」に記載した(1)の結果を獲得したため、本目標はほぼ達成できた状態にある。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は01班の星野らのグループで作製した合成高分子ライブラリーに対するMACE法の適用を検証する。同ライブラリーを用いる分子進化工学的実験系の概念実証を、標的タンパク質・ペプチドに対して行う。他の計画班間での準備状況から、血管内皮増殖因子(VEGF)や短鎖ペプチドであるメリチンに対して結合親和性を示すナノ粒子や高分子配列が明らかとなっている 。同高分子を含むコンジュゲート分子と、配列相同性が低い高分子コンジュゲートを等量混合してモデルライブラリーを調製し、申請者の保有する MACE 分離法で非結合種の排除を行った後、リガーゼ処理、次世代シーケンス(NGS)解析を行うことで、標的分子に対して高い親和性を示した精密高分子配列を同定する。また、「研究実績の概要」に記載した(1)で獲得した低分子薬候補分子の植物に対する応答なども確認を行う。
|