研究領域 | 精密高分子による次世代医薬開拓 |
研究課題/領域番号 |
22H05049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉本 敬太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60392172)
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研究分担者 |
坂田 飛鳥 奈良県立医科大学, 医学部, 助教(共同研究講座) (90528457)
松尾 宗征 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90869025)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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キーワード | 核酸 / 合成高分子 / 血液凝固疾患 / 分子進化工学 |
研究実績の概要 |
本変革研究では、抗体・核酸医薬品の先にある、未踏の次世代型薬剤モダリティーを創出し、医薬品開発における学術的アプローチに新たな変革をもたらすため、精密オリゴ高分子の薬剤モダリティーとしての潜在能力を明らかとするとともに、最大限まで引き出すことを目標としている。 申請者が確立した粒子導入型キャピラリー電気泳動分離法(magnetic beads-assistedcapillary electrophoresis: MACE)をDNAコード化ケミカルライブラリー(DEL)に適用可能か検証を行うため、高い選択圧がかかるペプチド-オリゴヌクレオチド複合体(POC)の分離を評価した。検討した三種のペプチドの電荷特性は異なるが、すべてのPOCはビーズから十分に分離でき、タグ付きDNA増幅はリガンド/ターゲットのカップルでのみ観察され、MACEを使用してペプチドリガンドの巧妙な特異的分配が達成されたことが示唆された(Analytical Biochemistry, 2024)。 また、抗トロンビンDNAアプタマーM08s-1を有望な抗凝固剤として用い、そのホモ二量体とTBA29を連結したヘテロ二量体を設計した。二量体化されたM08s-1ベースのアプタマーは、モノマーの対応物と比較して、ヒトおよびマウスのトロンビンに対する結合親和性が約100倍高かった。この二価アプタマーをマウスに投与したところ、二量体の抗凝固活性が既存薬のアルガトロバンを有意に上回ることが明らかになった(Molecular Therapy -Nucleic Acids, 2023)。 さらに、M08s-1とトロンビン複合体の結晶構造解析に成功し、同アプタマーの極めてユニークな分子内捻れ構造の存在が明らかとなった(Nucleic Acids Research, 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった、DELとMACE分離法の融合検証が達成されたため。現在、A01班で構築中の精密合成高分子ライブラリが完成次第、検証を開始する状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
抗体・核酸医薬品の先にある、未踏の次世代型薬剤モダリティーを創出し、医薬品開発における学術的アプローチに新たな変革をもたらすため、精密オリゴ高分子の薬剤モダリティーとしての潜在能力を明らかとするとともに、最大限まで引き出すことを目標としている。 本計画班(A02班)では、星野グループ(A01班)で獲得する精密オリゴ高分子群を分子進化工学的手法に適用可能な新規ライブラリーとして進化させ、高分子の構造情報を内包した核酸または核酸アプタマーでタグ付けしたコンジュゲート分子を作製する。さらに、申請者が核酸の分子認識化学の知見、確立済の分子進化工学的手法、核酸塩基配列の大規模シーケンス解析のノウハウ等を総動員し、構築した核酸タグ付きコンジュゲート分子を用いてペプチドやタンパク質に対して高い親和性をもつ精密高分子のスクリーニングを行う。
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