研究領域 | 間質リテラシ―:間質の細胞多様性に基づく疾患メカニズムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
22H05064
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
七野 成之 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (70822435)
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研究分担者 |
尾松 芳樹 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (80437277)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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キーワード | 肺間質ネットワーク / 骨髄間質ネットワーク / single-cell RNA-seq |
研究実績の概要 |
多様な細胞集団で構成される間質は、生体の種々の臓器の恒常性維持や病態発現において実質と同等かそれ以上に重要な役割を担っている。間質において、間葉系細胞や血球細胞を始めとした多様な細胞が織りなす相互作用の、間質機能の維持における重要性が解明されつつあるが、多様な複雑系細胞クロストークで構成される間質性細胞ネットワークの、異なる臓器間の共通性や差異、ネットワーク同士の相互作用は全く明らかではない。本研究提案では、間質がその機能維持において重要な肺及び骨髄に着目し、各種遺伝子改変マウスや、研究代表者ら独自の高精度・高感度1細胞RNA-seq解析法を用い、両者の間質性細胞ネットワークの共通点および差異、及び肺傷害時における肺-骨髄間の間質性細胞ネットワークの変化と相互作用の実態、生理的意義、細胞・分子機構の解明を目的とした。 2022年度は、肺及び骨髄間質の恒常性維持に係わる細胞や分子につき解析を実施した。肺傷害から修復に至る過程において、1細胞RNA-seq解析により経時的な細胞間相互作用で構成される間質ネットワークの変化を解析したところ、肺傷害期においては間質マクロファージが、修復期においては肺胞マクロファージが中心的な細胞の一つであることが見出された。間質マクロファージは主にC1qの産生を介して線維芽細胞・上皮細胞を主要なターゲットとして活性化や肺傷害・線維化を誘導すること、また肺胞マクロファージは上皮細胞・内皮細胞を主要なターゲットとし、肺胞マクロファージ特異的に産生されるアディポカインの一種が修復を促進していることが見出された。また、骨髄の間質の主要な構成細胞であるCAR細胞は骨髄造血ニッチの維持に重要な役割を果たしている。CAR細胞の機能制御に係わる転写因子を探索したところ、Runx1/Runx2が協奏的に働き、骨髄線維化を抑制していることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、肺および骨髄の恒常性維持において重要な細胞や分子の一端を、肺傷害、肺組織修復、骨髄造血ニッチの維持という観点で明らかにすることができた。また、肺傷害時における肺ー骨髄間の相互作用の一端を解明するため、肺の各種マクロファージの誘導機構につき、種々のケモカイン欠損マウスにて解析したところ、肺の肺胞・間質マクロファージの供給や構成比率に係わるケモカインが同定され、また骨髄や末梢血においてもそれらの前駆細胞集団の構成比率が変化していることを見出すなど、異なる臓器間の連携についても知見が得られつつあることから、当初の研究目的の達成に向けて順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度までに同定された、各臓器の恒常性維持に係わる細胞や分子に着目し、それらの誘導や維持において肺-骨髄間相互作用が関与するのか、また関与するのであればその実態の解明に向けて引き続き解析をすすめる。特に、細胞固定とscRNA-seq解析の組み合わせにより、時間分解能をあげた1細胞解析を異なる臓器間で並行して実施することで、肺ー骨髄の間質ネットワークの相互作用の理解を目指し、領域の推進に貢献する。
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