研究領域 | プラスチド相転換ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
22H05076
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
小林 康一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40587945)
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研究分担者 |
永田 典子 日本女子大学, 理学部, 教授 (40311352)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / 葉緑体 / 脂質 / 光合成 / チラコイド膜 |
研究実績の概要 |
高等植物の色素体は細胞の機能や環境に応じて多様な形態へと可塑的に分化する。なかでも、葉緑体は光合成反応の場であると同時に活性酸素種を生み出す危険性も内包するため、その発達は厳密にコントロールされる必要があるが、細胞ごとに発達させるか否かを決める仕組みは明らかでない。本研究では、葉緑体への分化を決定づけるチラコイド膜形成過程とその仕組みを明らかにすることで、光合成の機能化と葉緑体分化の制御機構を解明する。特に本研究では、チラコイド膜の足場を作る膜脂質に着目し、分子生物学的・生化学的な解析と顕微鏡解析技術を組み合わせることで、チラコイド膜の詳細な形成過程とその際の膜脂質の役割を明らかにすることを目的としている。 本研究では、チラコイド膜の形成過程を明らかにするために、各種チラコイド膜脂質の合成を欠いた複数のシロイヌナズナ変異体の葉緑体膜の機能や構造を生化学的解析や電子顕微鏡により詳細に調べることで、チラコイド膜形成プロセスとそこに関与する脂質クラスの役割を明らかにすることを解析の1つの柱にしている。主なチラコイド膜脂質はMGDG、DGDG、DGDG、SQDGの4種であり、これらそれぞれの脂質に対して、合成する酵素遺伝子の機能が減少、もしくは欠損した変異体を取得している。そこで、本研究の準備段階として、それらの変異体に対して、様々な組み合わせで二重変異体の作成を行った。また、すでに所得しているSQDG合成とPG合成の二重変異体の葉緑体形成時における詳細な解析を行った。また、DGDG合成とSQDG合成をともに欠損した変異体の二重ホモ接合体の単離に成功した。DGDG合成の欠損に加え、PG合成が減少した変異体や、MGDGの合成の低下に加え、SQDGやPG合成に障害をもつ変異体のスクリーニングも進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、SQDG合成とPG合成の変異体に着目した解析を進め、これらの脂質がシロイヌナズナの光形態形成時におけるクロロフィル合成に決定的な役割を果たすことを見出すことができた。また、DGDG合成とSQDG合成をともに欠損した二重変異体の単離にも成功し、予備的解析を進めることができた。その結果、DGDGとSQDGをともに欠損すると、クロロフィルの蓄積阻害だけでなく、光合成の非光化学的消光の制御に異常をきたすことを明らかにした。その他、(1) DGDG合成とPG合成、(2) MGDG合成とSQDG合成、(3) MGDG合成とPG合成、(4) MGDG合成とDGDG合成、がともに欠損もしくは減少した変異体のスクリーニングを実施中であり、各ラインとも、少なくともF2世代まで獲得することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
SQDGとPGの合成に欠損をもつ変異体の解析をさらに進め、今年度中に論文で発表することを目標とする。そのうえで、DGDGとSQDGをともに欠損した変異体の解析をメインに進め、これらの脂質の相補関係を多様な視点から明らかにすることを目指す。特に、電子顕微鏡解析を詳細に行うことで、これらの脂質合成が欠損したときに、膜の形成がどのような影響を受けるのかを明らかにする。また、生化学的・分子生物学的な解析により、その際に葉緑体でおこる色素合成や遺伝子発現、光合成の機能化などのプロセスがどのような影響を受けるのかを解析する。これらの解析と並行して、様々な変異体シリーズのスクリーニングを進め、ホモ接合ラインが得られ次第、個別の解析を行っていく。
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