研究領域 | データ記述科学の創出と諸分野への横断的展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05105
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白井 朋之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (70302932)
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研究分担者 |
本多 正平 東北大学, 理学研究科, 教授 (60574738)
Escolar EmersonGaw 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (20850499)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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キーワード | 最適輸送理論 / パーシステント加群 / 確率場・確率過程 |
研究実績の概要 |
Multi Dimensional Scaling(MDS)の無限版が最近Kroshnin-Stepanov-TrevisanとLim-Memoli等のグループによって導入されたので、その詳細を理解することを試みて成功した。実際、残っている取り組むべき問題(例えばMDS写像が実際に埋め込みになっているかなど)がはっきりした。一方でそのような問題と関係して、その定式化にも改善の余地が見られたので、それについて現在取り組んでいる。具体的には、連続性を仮定しないカーネル埋め込みによる一般論の構築を試みており、部分的な結果はすでに得られており、それはすでにある熱核埋め込みなどの理論も含む枠組みとなっている。マルチパラメータ版のパーシステントホモロジーを構築するために、区間表現による分解および区間近似の研究に取り組んでいる。まずは、一般の表現(パーシステンス加群)及びパラメータ空間の複雑さの指標となる区間次元を導入して、その理論基盤の整備を行った。具体的には、区間次元の有限性を示し、Auslander-Reiten translationによる区間次元の計算式を与えた。また、区間近似の具体的な構成に成功して、計算するアルゴリズムの開発を開始した。さらに、低い区間次元を持つパラメータ空間を特定するために、計算機実験で様々なパラメータ空間を考察した。確率場の一例としていわゆる離散行列式確率場を取り上げて、従来の非負定値行列をパラメータとするモデルを一般化して歪対称行列までパラメータに含めたモデルを考察した。特にそれを基礎にした機械学習の定式化に関連する計算機実験を実施した。また、画像の生成モデルの機械学習的アプローチにあらわれる確率微分方程式に関する先行研究の情報収集を行い、対応するマルコフ連鎖について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無限MDSは導入されたばかりの概念であるため、その正確で深い理解を得ることと取り組むべき具体的な重要な問題を適切に見つけることが最初の問題であったが、それは達成されたこと、さらにその方向で部分的な結果がすでに得られている。マルチパラメータ化したパーシステンス加群の複雑さを測るための指標である区間次元の導入と理論基盤の整備がある程度できた。これは今後のマルチパラメータ化の研究に使える強力な道具の一つになると期待できる。行列式確率場の一般化の機械学習に関する研究については、計算機実験による試行錯誤の段階ではあるが、いくつかの意味のある数値的な計算結果も出てきている。これらを総合して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在対称性が非常に高いリーマン多様体に対してだけ、無限MDSが具体的に計算されているので、それをもっと広い枠組みで実現したい。そのために、連続とは限らないカーネル埋め込みの理論を構築することでその達成を試みる。また、高次のカーネル埋め込みの理論の構築にも現在取り組んでおり、それと無限MDSの関係もみえてきているので、そちらの研究も推進する。パーシステントホモロジーのマルチパラメータ化のため、引き続き区間分解と区間近似の研究を進める。理論の側面では、標準的なホモロジー代数で有益な情報を持つKoszul Complexの導入や、区間分解の双対である区間余分解の使用を調べる。また、低い区間次元を持つパラメータ空間の特定を試みる。さらに、データ解析における区間近似の解釈を解明するために、実データの区間近似を計算して理論的な性質と照らし合わせながら方法論の構築に取り組む。また、今年度に引き続き、拡張された行列式確率場の理論的な考察と、計算機による数値的研究のハイブリッドの形で更なる研究を進めたい。また画像生成の学習にあらわれる確率微分方程式の重要な性質を抽象する形で、点過程のダイナミクスとの類似性にも着目して、マルコフ連鎖の研究の新しい側面について考察を進めたい。
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