研究領域 | 「学習物理学」の創成-機械学習と物理学の融合新領域による基礎物理学の変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05112
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研究機関 | 大阪国際工科専門職大学 |
研究代表者 |
富谷 昭夫 大阪国際工科専門職大学, 工科学部, 助教 (50837185)
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研究分担者 |
大野 浩史 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (20734396)
柏 浩司 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (50612123)
櫻井 鉄也 筑波大学, システム情報系, 教授 (60187086)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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キーワード | 格子ゲージ理論 / 自己学習モンテカルロ法 / トランスフォーマー / 負符号問題 |
研究実績の概要 |
2023年度も、昨年度に引き続き、計算物理学と機械学習の融合を目指し、特にマルコフ連鎖モンテカルロ法における臨界減速及び負符号問題の解決に向けて研究を進めた。昨年度の研究成果を基盤に、さらに詳細な解析と応用を行った。 まず、マルコフ連鎖モンテカルロ法においては、自己学習モンテカルロ法と対称性を保つトランスフォーマーを組み合わせる手法を開発した。具体的には、物性系において対称性を保つトランスフォーマーを用いた自己学習モンテカルロ法を適用し、従来の手法に比べて計算効率を飛躍的に向上させることに成功した。ゲージ共変トランスフォーマーにはまだ至っていないが、物性系での成功は今後の発展に大いに寄与するものと考えられる。スパースモデリングを応用したQCDスペクトル関数の研究も行った。 次に、負符号問題に対しては、経路最適化法を用いた研究を深化させた。具体的には、連続自由度を持つ量子場理論における負符号問題を機械学習で制御するために提案された経路最適化法を、離散自由度を持つスピンモデルに適用した。ハバード-ストラトノヴィッチ変換を用いてスピンを動的変数に置き換え、和を積分に変換することで、経路最適化法を適用した。この手法を複素結合定数を持つ一次元の模型に適用し、負符号問題を弱めることに成功した。この結果、統計誤差を制御しつつ解析値を再現できることを確認した。 研究の推進にあたり、若手研究者の育成にも力を入れた。昨年度に引き続き研究会や集中講義を開催し、次世代の研究者が最新の技術や知識を習得する機会を提供した。これにより、学際的な研究コミュニティ全体のさらなる発展に寄与した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題はおおむね順調に進んでいる。特に、トランスフォーマー型ニューラルネットの有用性を見つけたことで、研究の方針を一部変更したが、この変更により当初の予測を上回る成果を得ることができた。具体的には、自己学習モンテカルロ法と対称性を保つトランスフォーマーを組み合わせる手法を開発し、物性系での適用に成功した。これにより、従来の手法に比べて計算効率が飛躍的に向上し、物性系での成功は今後のさらなる発展に寄与するものと考えられる。また、負符号問題に対する経路最適化法の研究も進展し、一次元のスピンモデルにおいて負符号問題を効果的に緩和する手法を確立した。この結果、統計誤差を制御しつつ解析値を再現することができた。これらの成果により、研究の進捗はおおむね順調といえるものであり、今後の研究活動にも良い影響を与えると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、ゲージ共変トランスフォーマーの構成を目指しつつ、その実装に伴う計算コストの問題に対処するための効率的なアルゴリズムの開発を検討する。また、経路最適化法におけるトランスフォーマーの適用可能性も探ることで、負符号問題のさらなる解決策を模索する。引き続き、若手研究者の育成にも注力し、研究会や集中講義を通じて次世代の研究者が最新の技術や知識を習得する機会を提供する。これらの取り組みにより、計算物理学と機械学習の融合を一層推進し、学際的な研究の発展に寄与することを目指す。
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備考 |
学際分野における若手育成のための研究会とスクールの情報を掲載した。
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