研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05132
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
余越 伸彦 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90409681)
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研究分担者 |
田中 嘉人 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50533733)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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キーワード | 超螺旋光 / 非線形光学 / 光渦 / プラズモニクス |
研究実績の概要 |
導入したクラスタエレメントを用いて、ナノスケールの金属探針によるプラズモン場とキラル単分子との相互作用を解析し、キラル分子の分子内円二色性の測定を提案した。分子の双極子許容遷移と双極子禁制遷移を用いた測定についてシミュレーションを行い、どちらの場合についてもキラル分子とアキラル分子とでは定性的に異なる像が得られることを明らかにした。光渦照射の影響については、単層の遷移金属ダイカルコゲナイドの多極子遷移に注目し、励起される伝導電子のスピンミキシングの可能性を明らかにした。多体問題として、分子などの発光体集団が起こす非線形な同期的発光(超蛍光)の発光強度や発光方向について検証し、キラルプラズモン場では発光体配置の配置のキラル配置に依存した発光があることを見出した。 一方で実験面での進展として、スピン角運動量をもつ円偏光を光源とする円二色性顕微分光イメージングシステムを開発した。また、非線形プロセスを介した光の角運動量変換を研究するために、プラズモニックナノ構造からの第二高調波発生(SHG)のメカニズム解明に取り組んだ。システム開発に関しては、光学顕微鏡に導入した左右円偏光の波長可変チタンサファイアレーザーを、対向させた対物レンズを通して分光器に接続させることで、高い空間分解能でサンプルの二色性スペクトルが得られるシステムを構築した。また、回転対称性を持つナノ構造との相互作用に伴う光の角運動量変換を、これまで研究してきた線形プロセスから非線形プロセスへの理解に拡張するため、プラズモニックナノ構造からのSHG発生プロセスを研究し、結晶構造が反転対称性を持つ金属ナノ構造の場合、空間対称性がevenであるプラズモンモードからSHG放射が生じることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論面では計画通り、キラル分子や原子層物質について光渦やプラズモン場などの超螺旋光の影響が現れるような現象について明らかになってきている。実験面においても、スピン角運動量をもつ円偏光を光源とする円二色性顕微分光イメージングシステムを開発し、高い空間分解能でサンプルの二色性スペクトルが得られている。全体の進捗は概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発した顕微分光システムに空間位相変調器を導入し、キラルナノ構造の光渦二色性分光ができるように拡張する。また、光渦二色性においてキラル分子や金属ナノ構造と集光スポットとの位置関係が重要になるため、高精度のピエゾステージを使って位置関係を高い分解能で制御できるシステムを構築する。一方で、理論面ではこれまで構築した光渦による多極子遷移やキラル選択的な相互作用を扱う理論に、誘導放出や高次高調波発生などの非線形応答の影響を取り入れる。渦二色性分光イメージングシステムと非線形光学応答理論を駆使し、金属ナノ構造や単層遷移金属ダイカルコゲナイド・Twisted grapheneといったナノ構造と光のスピンと軌道の角運動量との相互作用を定性的・定量的に明らかにする。また、初年度に立ち上げた、金属ナノ構造の非線形光学応答を計算するシミュレーション法についても、光源をスピンと軌道の角運動量を自由に変えることができるように改良し、角運動量保存やスピン軌道角運動量変換の観点から相互作用を理解し、実験結果を解析する。
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