研究領域 | 超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
22H05146
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
桑原 彰秀 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主席研究員 (30378799)
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研究分担者 |
前園 涼 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40354146)
辻 雄太 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (80727074)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / マテリアルズ・インフォマティクス / 点欠陥 / フォノン / 遺伝的アルゴリズム / 表面 / 触媒 |
研究実績の概要 |
超セラミックス材料の構造解析と物質変換反応の計算機シミュレーション:分子ユニットを構造内に包含する結晶構造のプロトタイプとしてペロブスカイト型構造に着目し、結晶構造データベース(ICSD)から分子ユニットを有するペロブスカイト型化合物のデータ抽出と分類を行い、推薦システムによる合成可能性の予測を行った。温度変化に対して特異的な結晶構造変化を示す超セラミックス材料について第一原理格子動力学計算を実施、分子ユニットが特異的なフォノン振動数を示すことが確認された。従来のセラミックス材料の欠陥化学では単原子由来の「点欠陥」を研究対象としてきたが、本研究では超セラミックス系材料の特徴である「分子ユニット」欠陥の生成可能性について第一原理計算を用いて検討した。 超セラミックス材料のデータ駆動型物質探索と合成可能性予測:遺伝的アルゴリズムによる構造探索やデータ回帰に基づく物質設計予測について研究成果を獲得した。ドーピングによる物性改善に向けて、置換結晶構造モデルの生成アルゴリズムを開発した。第一原理マテリアルズ・インフォマティクスや量子アニーリング応用に関しての専門書のチャプター執筆を担当し、当該コミュニティに資する貢献を行なった。 超セラミックス表面の反応と物性の理論的研究:超セラミックス表面の触媒過程についての理論的研究を実施した。Rhクラスターを担持したセリア系複合触媒による1,4-アリール化反応に関する理論的研究を実施した。Rhクラスターに配位したN-ヘテロ環状カルベン(NHC)がトリガーとなって生じる触媒活性に関する理論的洞察を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超セラミックス材料の構造解析と物質変換反応の計算機シミュレーション:結晶構造データベース(ICSD)から分子ユニットを有するペロブスカイト型化合物(ABX3)の構造データを抽出、12配位のAサイトと6配位多面体ユニットBX6の分類と化合物の報告有無のデータセットに対して、テンソル分解を用いた推薦システムによる合成可能性の予測を行った。第一原理格子動力学計算を用いて超セラミックス材料Zn(SCN)2、(NH4)3GeF7のフォノン分散曲線を解析、(SCN)-や(NH4)+イオンが特徴的な高周波数の光学モードを有することが確認された。 超セラミックス材料のデータ駆動型物質探索と合成可能性予測:遺伝的アルゴリズムによる構造探索で2報、データ回帰に基づく物質設計予測で1報、その他関連する研究テーマで3報の原著論文成果を挙げた。特に、データ駆動型の物質構造探索については、予想以上の成果が次々と得られつつあり、複数の課題が進行中である。領域内の実験グループとの協働についても、電子状態解析を駆使した以前からの協働課題で順調に成果が得られつつある。 超セラミックス表面の反応と物性の理論的研究:層状アルミノシリケート(LAS)と配位子分子の複合系における陰イオン性の表面によって誘起される誘電分極により、求電子性金属配位反応の速度定数が増大する現象に関する詳細なメカニズムの解明に関する理論的研究を進めている。関連する研究テーマで3報の原著論文成果を挙げた。
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今後の研究の推進方策 |
超セラミックス材料の構造解析と物質変換反応の計算機シミュレーション:従来のセラミックス材料におけるペロブスカイト構造の構造安定性については、イオン半径で記述する許容因子で整理されてきた。分子ユニットを包含する超セラミックスの構造安定性についても、分子サイズを用いた許容因子での整理を検討する。超セラミックス材料の熱振動状態解析は、熱膨張係数の異方性が主要な対象である。擬調和近似に基づいた第一原理格子動力学計算や圧力一定条件下での第一原理分子動力学計算は計算負荷が極めて高く実行時間に困難が生じることが2022年度の予備検討で判明した。そこで、次年度からは機械学習ポテンシャル分子動力学計算による熱膨張解析に注力することとする。分子ユニットを持つ超セラミックス材料における網羅的な点欠陥形成エネルギー計算を通じて、分子ユニット欠陥構造の可能性を引き続き、検討する。 超セラミックス材料のデータ駆動型物質探索と合成可能性予測:遺伝的アルゴリズムによる構造探索で2報、データ回帰に基づく物質設計予測で1報、その他関連する研究テーマで3報の原著論文成果を挙げた。特に、データ駆動型の物質構造探索については、予想以上の成果が次々と得られつつあり、複数の課題が進行中である。領域内の実験グループとの協働についても、電子状態解析を駆使した以前からの協働課題で順調に成果が得られつつある。 超セラミックス表面の反応と物性の理論的研究:NHC配位による触媒活性メカニズムの詳細な解明を進めるため、動力学モデルを用いて反応経路とエネルギー障壁を解析する。また、LAS表面での誘電分極効果を利用した新規触媒の設計を行い、その効果を検証する。さらに、この知見を他の金属酸化物表面に応用し、さまざまな化学反応への拡張を目指す。関連する研究テーマで3報の原著論文成果を挙げた。
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