計画研究
(光触媒)内圏型超セラミックス光触媒KGF-9について、常温常圧下、短時間(1時間)で合成できる新規ルートを発見した。従来法では373 K、48時間の条件を必要としたが、今回の発見でより温和な条件での合成が可能となった。二酸化炭素還元の光触媒として、新規法で合成したものは従来法の約6倍の高活性となった。新規法で合成したものは従来法と比べて10倍以上比表面積が高く、また励起キャリアの寿命も長いことが示された。本成果はSolar RRL誌で発表した。(二次電池)Ruddlesden-Popper型ペロブスカイト構造を有するLa1.2Sr1.8Mn2O7-δF2酸フッ化物が既存のLiイオン二次電池正極材料を超える200 mAh g-1という高い可逆容量を示すことを見出した。反応機構を解析したところ、酸化物イオンが電荷補償をする際に構造内で酸素分子結合が形成する超セラミックス材料として機能していることで過剰なF-の挿入を可能にしていることを明らかにした。本成果はJACS誌で発表した。また酸素分子形成にみならず、硫黄-硫黄共有結合を形成する超セラミックス材料正極 Sr2F2Fe2OS2 を見出し 340 mAh g-1を超える可逆容量を示すことを明らかにした。本成果はChem. Mater.誌で発表した。(生体材料)前年度の研究で用いたモデルタンパク質に替えて、臨床応用されている塩基性タンパク質(塩基性線維芽細胞増殖因子)等を薬物として用い、薬物担持リン酸カルシウムからなるナノ粒子および薄膜を合成した。担持薬物を失活させることなく有効濃度で徐放することのできる薬物担持リン酸カルシウムナノ粒子・薄膜の設計・構築指針を明らかにし、得られた材料の細胞増殖に対する効果をin vitro実験で実証した。本成果を含むこれまでの成果により、日本バイオマテリアル学会賞を受賞した。
2: おおむね順調に進展している
上記の通り、個々のグループでの研究が着実な進展を見せ、さらには新たな異分野間共同研究が複数立ち上がっている。未発表成果ではあるが、内圏型超セラミックス光触媒については優れた電極触媒機能が見出され、化学反応に特化した別プロジェクトへと展開しているものもある。このような現状を鑑み、本計画研究はおおむね順調に進展していると判断した。
(光触媒)KGF-9と類似のPb系超セラミックスに関して、Pb周辺の配位環境による触媒活性の違いを明らかにする。また公募グループと協力して、遷移金属系の内圏型超セラミックスの触媒応用の可能性を探求する。外圏型超セラミックスのビルディングユニットとして有望なK2LaTa2O6Nについて、カチオンドープによる高活性化と薄膜電極による分子触媒との融合を図る。(二次電池・電極触媒)引き続き層状ペロブスカイトを中心に探索範囲を酸フッ化物だけでなく、窒フッ化物、硫フッ化物に拡張し、アニオン(F-、O2-、S2-、N3-)配列と結晶内分子形成、イオン拡散に最適な結晶・局所構造、電子構造の要素をA01班と共同で明らかにし、カチオン置換も駆使して高容量電池材料を生み出す条件を明らかにする。また、超セラミックス電極触媒開発のための設計指針を明らかにする。今年度は、高電位における超セラミックス電極触媒表面での酸素分子形成挙動を、A01班と共同で明らかにし、高活性酸素発生触媒の設計指針を明らかにする。(生体材料)前年度に引き続き、リン酸カルシウム系超セラミックスの合成技術の高度化とバイオ機能の制御指針を追求していく。2024年度は、リン酸カルシウムへの抗感染性の付与を目的とし、抗菌成分(低分子抗菌剤、抗菌性イオン等)を担持したリン酸カルシウム粒子および薄膜の合成技術開発を進めると共に、公募グループとの連携により成膜基材の拡張を進める。得られたリン酸カルシウム材料の各種口腔内細菌に対する抗菌性をin vitro試験により検証し、抗菌性リン酸カルシウム系超セラミックスの設計・構築指針を明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (24件) (うち国際共著 6件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (54件) (うち国際学会 12件、 招待講演 15件) 図書 (3件)
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