研究領域 | 力が制御する生体秩序の創発 |
研究課題/領域番号 |
22H05168
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
Phng LiKun 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (70794098)
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研究分担者 |
進藤 麻子 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (60512118)
藤森 俊彦 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 教授 (80301274)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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キーワード | メカノケミカルフィードバック / 管腔組織 / 組織構築 / 管腔メカニクス |
研究実績の概要 |
血管 (ゼブラフィッシュ)、甲状腺 (アフリカツメガエル)、子宮 (マウス) を対象とし、以下の内容を実施した。ゼブラフィッシュの血管網形成における血管内壁のせん断応力および圧力分布を計算するために、3次元の流体力学モデルを確立した。血液の流れ、血管壁のせん断応力および圧力が、ヘマトクリット値や血管の形態の変化にどのように適応するかを検証するために、上記モデルをゼブラフィッシュの実験と組み合わせた。さらに、血流の力の変化に対する内皮細胞の応答をアクチン線維の可視化により検証した。その結果、血流の増加がアクチン細胞骨格を再構築し、細胞皮質でより多くのアクチンメッシュが形成されることが分かった。ツメガエル甲状腺においては、内腔内容物の抽出を試みたが、腔が小さいためガラスキャピラリーでも太すぎること、甲状腺周囲には硬い膜が存在することがわかり、新たなツールの開拓が必要となることがわかった。また、内腔の動態を明らかにするために全身の細胞膜に蛍光タンパク質を発現する変異体幼生を用いてライブイメージングを試みた。甲状腺を単離し、組織培養法を併用することで細胞レベルの解像度でライブイメージングを行うことができた。マウス子宮においては、内膜上皮の自律的変形、上皮を取り囲む子宮間質細胞の増殖あるいは、子宮筋の動きによる機械的力による影響のいずれによって子宮上皮層が変形するか判定を行った。子宮内膜上皮細胞の変形の解析により、胚のごく周辺とその他の領域では上皮細胞の伸長方向が異なること、間質細胞の増殖や子宮筋の動きを抑制した際にも上皮形態は正常におきることから、上皮細胞の自律的変化により着床室が形成されることが示唆された。そこで、質量分析による子宮上皮細胞で発現するタンパク質の変化の解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究員の雇用が2023年10月から開始したため
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今後の研究の推進方策 |
ゼブラフィッシュ血管形成研究では、内皮細胞の機械的応答に対するせん断応力と圧力の影響を区別するため、ヒト動脈内皮細胞を用いたex vivoシステムの確立を目指す。これにはIbidiポンプシステムとFlexCellテンションシステムをそれぞれ使用する。また、内皮細胞が異なる種類の力にさらされたときの細胞の形態、配向、極性などの挙動、アクチン細胞骨格の再構築、および細胞間接合の形態を解析する。さらに、ゼブラフィッシュにおける血流の力の変化が内皮細胞接合の形態と動態に与える影響について検証する。ツメガエル甲状腺においては、組織培養法を用いたライブイメージングを継続し、内腔の動態の解析を進める。また、これまでのライブイメージングから細胞が活発に動くことが示唆されているため、細胞骨格や細胞外マトリックスがどのような細胞駆動力を生み出しているか検証する。マウス子宮においては、子宮上皮細胞の形態変化をもたらす機構の解明を進める。また、着床室形成に伴って、着床後の胚と子宮の位置関係がどのような機構により成立するか解析を進める。さらに、胚から子宮上皮細胞への着床室形成を誘導する刺激が入力される際に、胚からの化学的刺激及び物理刺激のいずれかが重要か解析する 。
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