研究領域 | 力が制御する生体秩序の創発 |
研究課題/領域番号 |
22H05171
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉村 成弘 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90346106)
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研究分担者 |
谷本 博一 横浜市立大学, 理学部, 准教授 (60784907)
宮崎 牧人 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (40609236)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / リポソーム / 磁気ピンセット / 光遺伝学 / 力学計測 / 細胞接着 |
研究実績の概要 |
研究項目Ⅰ:発生多細胞システムにおける表層メカニクスの力学的解析法の確立 細胞表層骨格の力学性質決定に関与すると考えられているタンパク質群に関して、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて詳細な機能解析を行った結果、ARHGAP18の細胞内局在が、表層アクチンの構造と性質を制御していることを明らかにした(論文投稿済み)。また、高速AFMを用いて、細胞表層におけるアクチン重合と細胞膜変形とを繋ぐ仕組みを解明することに成功した(論文投稿済み)。多細胞試料保持のためのPDMSチャンバに関しては、京都大学ナノハブと共同しながら、線虫胚を保持するためのチャンバ作成に着手した。 研究項目Ⅱ:磁気プローブのin situ調節に基づく生体内部構造の力学計測 磁気ピンセットは、生体深部に定量的な力学摂動を印加するほぼ唯一の手法であるが、多細胞システムへの応用は限定的である。そこで本年度は、磁気プローブの性質を生体内で「in situ調節」することで多細胞システムに適用可能な磁気ピンセットの構築を目指し、光遺伝学的手法による磁気プローブの表面状態制御に取り組んだ。先行研究に基づいて光制御可能なナノボディを精製し、その標的結合能力が光制御できることを試験管内で確かめた。 研究項目Ⅲ:リポソームを用いた細胞間力学計測・操作技術の開発 組織内部に働く力を計測・操作する手法として、生体に注入した油滴やゲルの変形から周囲の応力を推定する方法が近年報告されているが、いずれも生体親和性が低く、長時間の計測・操作には適さない。そこで初年度は、生体親和性の高い力学計測・操作プローブを開発することを目的として、リポソームの脂質組成と形成効率、サイズ分布の関係を定量化し、適当な大きさのリポソームが高効率で形成される条件の検討を行った(論文準備中)。また、リポソーム内にアクチン細胞骨格を封入する技術を開発した(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目Ⅰでは、培養細胞における力計測技術に関しては、確立済みであり、これを多細胞体へと応用するためのシステム作り(顕微鏡システムの構築及びチャンバの作成)が順調に進行している。項目Ⅱでは、本年度中に先行研究を再現することに成功しており、概ね順調に進んでいると考える。項目Ⅲでは、初年度の半年間で、リポソーム形成効率の定量評価やアクチン細胞骨格を封入する技術を確立できたほか、マウス胚培養用の培地中でのリポソームの形成にも成功していることから、概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
項目Ⅰでは、2023年度に力測定用AFMシステムを購入予定であり、これを現有の蛍光顕微鏡システムと組み合わせて、ハイブリッド計測システムを構築する。これを用いて、線虫胚を対象とした力計測系を構築し、茂木と共同で変異株の測定を試みる。項目Ⅱでは、今後、精製したナノボディが細胞内において光制御できる条件を探索するとともに、磁気ピンセット測定に用いるプローブをナノボディで修飾して細胞内に導入する技術を確立する。また、光刺激-蛍光観察の同時実現系を構築し、それを用いて細胞内でナノボディを光制御する条件を確立する。項目Ⅲでは、リポソーム内部に様々な硬さのゲルを封入する技術を開発するとともに、細胞間接着を形成するカドヘリンをリポソーム表面に結合させる技術を確立する。これらのリポソームを線虫およびマウスの初期胚から単離した細胞と融合させ、生体親和性の評価を行う。
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