研究領域 | 植物の挑戦的な繁殖適応戦略を駆動する両性花とその可塑性を支えるゲノム動態 |
研究課題/領域番号 |
22H05174
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 壮太 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90716713)
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研究分担者 |
加藤 義宣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10869390)
草野 修平 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (80759291)
櫻庭 俊 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (90647380)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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キーワード | 生殖 / 有機化学 / MDシミュレーション / 受精前障壁 / 自他識別 |
研究実績の概要 |
【課題1】異種排除コア因子による雌しべ細胞動態の制御:2023度は,転写制御因子SPRI2 の機能解析について研究を進め,成果報告した(Fujii et al Nature Plants 2023).SPRI2の転写結合活性については伊藤班と領域内で共同研究を行い,SPRI2の核内における液―液相分離構造体の形成メカニズムを明らかにした.また,SPRI2の相互作用因子を見出しつつあり,現在その機能解析を行なっている(Ito et al in preparation).また,SPRI2と同じく異種排除に関わる細胞膜タンパク質SPRI1についても論文を投稿した他(Kato et al biorxiv 2023, 投稿中),タンパク質構造解析を進めている.そして,花粉因子GRPやその他の花粉因子(Tangpranomkorn et al biorxiv 2022, 論文投稿中)についても機能分化解析を進めた.GRPに関してはMDシミュレーションの系を立ち上げ,実験と同時並行により天然変性領域の機能解明を目指している. 【課題2】自他識別機構コア分子の構造活性相関とゲノム進化:2023度は白澤班との領域内共同研究により,10系統のペチュニアについて近T2Tレベルのゲノム解析を完了した.その結果,S遺伝子座がセントロメアを内包していることが明らかになりつつある.また,多数のトランスポゾンがS遺伝子座の維持に関わることが見出せつつある.今後は,S遺伝子座の進化駆動力を支えるゲノム構造を追求する.また,S-RNaseの機能解析から,基質特異性があることが明らかになってきた.今後はMDシミュレーションや本研究で見出してきた特異的阻害剤を用いてS-RNaseの動作原理を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題1のSPRI2の機能解析については当初の目標を越え、SPRI2とその下流因子に関わる論文を公表した.また、SPRI1に関しても複合体の構造が明らかになりつつあり、こちらも現在論文投稿準備中である.課題2のS-RNaseの機能解析 については、阻害活性がある化合物が複数得られつつあり、さらにS-RNaseの予想外の機能特異性を発見しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
【課題1】異種排除コア因子による雌しべ細胞動態の制御 今後は、SPRI1複合体の高次構造を解明し,論文公表を目指す.また、SPRI1複合体に含まれる協調因子の候補についても機能解析を進めており、現象との関連を明らかにする.GRPに関しては、複数の分子種の機能比較の解析を進めており、天然変性領域のもつ役割について精査する. 【課題2】自他識別機構コア分子の構造活性相関とゲノム進化 T2Tレベルのゲノムが明らかになってきたため,引き続き、セントロメ アヒストンとS遺伝子座の関係性や、配列の進化について多角的な解析を行う.また、S-RNaseの塩基認識特異性についても特異的阻害化合物の機能解析を行ってきた他に,新たにS-RNaseを阻害する天然物を見出しつつある.RNA分解特異性については網羅的なアッセイ系を構築しつつあり,多様な植物から単離されたS-RNaseの活性を比較する.
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