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2022 年度 実績報告書

制御性T細胞の自己応答性制御機構とその破綻による自己免疫疾患発症機構の解明

計画研究

研究領域生体防御における自己認識の「功」と「罪」
研究課題/領域番号 22H05191
研究機関東京大学

研究代表者

堀 昌平  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)

研究期間 (年度) 2022-06-16 – 2027-03-31
キーワード制御性T細胞 / 自己免疫疾患 / 免疫寛容 / T細胞受容体 / 自己抗原
研究実績の概要

これまでに、組織Tregの一細胞RNA & TCR-seq解析から、Foxp3 A384T変異マウスの炎症組織(肺)では、強いTCRシグナルを受けて組織内に浸潤し、クローン増殖したエフェクター型Tregが欠損することを明らかにした。そして、疾患発症を抑制する機能に紐付いた、野生型マウス肺Treg選択的に発現する4種類のpublicなTCRクロノタイプを同定した。今年度、これらのうち強いTCRシグナルを受けGata3などTh2関連遺伝子群を高発現するエフェクターTregクラスターに選択的に発現するクロノタイプ(TCR#4)により、A384T変異マウスにおける炎症を肺組織選択的に抑制する機能をTregに賦与できることを明らかにした。そして、TCR#4をモノクローナルに発現するTCRレトロジェニックマウスを作製し、TCR#4を発現する細胞がTregに分化し、肺所属リンパ節に集積して活性化することを見いだした。
一方、Tbx21などTh1関連遺伝子群を高発現するエフェクターTregクラスター選択的に発現するクロノタイプ(TCR#1)については、Foxp3と協調してTh1型Tregへの分化を促進する活性を持つことを見いだした。このことから、エフェクターTregサブセット分化機構として、従来言われていたサイトカイン依存的(抗原非依存的)機構の他に、TCR特異性依存的な新規機構があると考えられた。
これらTCRが認識する自己抗原を同定するための実験系のセットアップも進めた。抗原提示細胞株として用いる樹状細胞株が定常状態ではCIITAをほとんど発現していなかったため、CIITAあるいはI-Abを導入することで表面にMHCクラスIIを発現させて抗原提示能を賦与した。そして、TCR#1と#4を発現させたT細胞ハイブリドーマを作製し、樹状細胞株が提示する自己抗原には反応しないことを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度、Tregの炎症抑制機能に紐付いたTCRクロノタイプ#4について重点的に解析を進めた。このTCRが、Foxp3 A384T変異マウスにおける炎症を肺組織選択的に抑制する機能を賦与し、TCRレトロジェニックマウスにおいてTreg分化を誘導し、肺所属リンパ節に集積させる機能を有した重要なTCRであることを明らかにした。このことは、このTCR#4の抗原を同定してこのTCRを発現するTregにより抑制されるT細胞のTCRレパトアと抗原特異性を解析することにより、Tregによる免疫制御の抗原特異性に迫れることを示唆しており、今後の研究の基盤となる重要な成果である。
また、TCR#1についてはレトロジェニックマウスの作製と炎症抑制機能解析を進めつつ、このTCRがFoxp3と協同してTh1型Tregへの分化を誘導する機能を持つことを明らかにした。このことは、エフェクターTregの不均一性形成に関して、TCR特異性依存的メカニズムという新しいメカニズムの存在を示しており、重要な成果であると言える。
抗原同定に関しては、九州大学の和泉自泰准教授との共同研究により、肺組織またはリンパ組織のタンパク質をエピトープが残るように断片化したペプチドの分離・分取・質量分析を行い、目的のTCRと反応するペプチドの同定を試みる。今年度そのためのレポーターアッセイ系を構築した。
以上の経緯・結果から、本研究は順調に進んでいると判断している。

今後の研究の推進方策

着目している他のTCRクロノタイプについて、TCR#4と同様にTregに強制発現させ、A384T変異マウスにおける炎症を肺組織選択的に抑制する機能を賦与できるか検討する。そして、TCRレトロジェニックマウスの作製を行い、これらのTCRによりTregがどの組織で分化し肺組織選択的に集積するか、炎症を肺組織選択的に抑制するか解析し、抗原特異性を明らかにする。TCR#1と#4についてはTCRトランスジェニックマウスの作製を進める。また、TCR#4については、このTCRを発現させたTregにより、どのようなTCRを発現した通常型T細胞(Tconv)が抑制されるのか、TCR#4を発現させたTregの存在下と非存在下でA384Tマウス肺のTconvのTCRレパトア解析を行い、TCR#4発現Treg存在下でクローン増殖が抑制されるTCRクロノタイプを同定する。
TCR特異性依存的エフェクターTreg分化機構に関しては、TCR#1をモデルとして研究を進める。このTCRを発現させたTregがTh1型Tregに分極化するメカニズムとして、TCRを介してTregと相互作用する通常型樹状細胞(cDC)の関与を考え、特にTh1分化を誘導するcDC1に着目する。TCR#1を発現したTregはcDC1依存的にTh1型Tregに分化するか、Th1型Tregへの分極化に重要と報告されているIFN-gに依存するか検討する。
抗原同定については、和泉グループと共同研究を進め、肺組織またはリンパ組織から抽出したタンパク質をペプチドに断片化して分離・分取し、目的のTCRを発現させたハイブリドーマを活性化させる画分を同定し、そこに含まれるペプチドを質量分析により決定する。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Functional analysis of Foxp3 and its mutants by retroviral transduction of murine primary CD4(+) T Cells.2023

    • 著者名/発表者名
      Nakajima A, Murakami R, Hori S
    • 雑誌名

      Methods in Molecular Biology

      巻: 2559 ページ: 79-94

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-2647-4_7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Neuropilin-1 (NRP1) expression distinguishes self-reactive helper T cells in systemic autoimmune disease.2022

    • 著者名/発表者名
      Raveney BJ, El-Darawish Y, Sato W, Arinuma Y, Yamaoka K, Hori S, Yamamura T, Oki S
    • 雑誌名

      EMBO Molecular Medicine

      巻: 14 ページ: e15864

    • DOI

      10.15252/emmm.202215864

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Whole-embryonic identification of maternal microchimeric cell types in mouse using single-cell RNA sequencing.2022

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto K, Nakajima A, Hori S, Tanaka Y, Shirasaki Y, Uemura S, Irie N
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 18313

    • DOI

      10.1038/s41598-022-20781-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Molecular control of Treg cell differentiation and function by Foxp3 and TCR signals.2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      2022 FIMSA Advanced Immunology Course
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Molecular control of Treg cell function by Foxp3 and TCR signals.2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      ImmunOctoberfest 2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Control of regulatory T cell differentiation and function by the transcription factor Foxp3 and the T cell receptordependent recognition of immunological self.2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Molecular control of Treg cell differentiation and function by Foxp3 and TCR signals.2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Foxp3 A384T変異は制御性T 細胞のTCR 刺激依存的な増殖をBatf発現抑制非依存的に障害する2022

    • 著者名/発表者名
      川越紗,村上龍一,堀昌平
    • 学会等名
      第31回Kyoto T Cell Conference
  • [学会発表] 制御性T細胞選択的BATF発現増強マウスの解析2022

    • 著者名/発表者名
      松浦宏大,村上龍一,堀昌平
    • 学会等名
      第31回Kyoto T Cell Conference
  • [学会発表] MHCクラスII分子はCD4 T細胞非依存的に大腸CD8 T細胞の活性化を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      千菊智也,堀昌平,瀬戸口留可
    • 学会等名
      第21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム2022
  • [学会発表] The Foxp3 A384T mutation impairs TCR-induced proliferation of effector regulatory T cells by interfering with c-Myc induction2022

    • 著者名/発表者名
      Suzu Kawagoe, Maori Oda, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Robust TCR signals control epigenetic conversion of conventional T cells to regulatory T cells through mTORC1-dependent expression of TET proteins2022

    • 著者名/発表者名
      Tomohide Kinoshita, Mai Ohno, Norihito Hayatsu, Reiko Ohnishi, Akira Nakajima, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Tissue-specific deficiency of clonally expanded regulatory T cells underlies tissue-restricted inflammation in Foxp3 A384T mutant mice2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshimichi Hoshiya, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Foxp3-transduced T cells acquire regulatory T cell-like epigenome, gene expression, and suppressive activity in vivo2022

    • 著者名/発表者名
      Yuxi Wei, Shotaro Funatsu, Ryuichi Murakami, Akira Nakajima, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] BATF-overexpressing Treg cells show enhanced tissue accumulation and suppressive ability in vivo2022

    • 著者名/発表者名
      Kohta Matsuura, Akihiko Kimura, Takahisa Miyao, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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