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2023 年度 実績報告書

制御性T細胞の自己応答性制御機構とその破綻による自己免疫疾患発症機構の解明

計画研究

研究領域生体防御における自己認識の「功」と「罪」
研究課題/領域番号 22H05191
研究機関東京大学

研究代表者

堀 昌平  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)

研究期間 (年度) 2022-06-16 – 2027-03-31
キーワード制御性T細胞 / 自己免疫疾患 / 免疫寛容 / T細胞受容体 / 自己抗原
研究実績の概要

以下の3項目につき研究を進めた。
(1) 組織選択的自己免疫疾患の抑制に紐付いたTCRクロノタイプの機能解析:野生型マウス肺に浸潤してクローン増殖し、Foxp3 A384T変異マウス肺で欠損するTCRクロノタイプのうち、Th2型Treg選択的に発現する#4について、TCRレトロジェクニックマウスの作製・解析を進めた。#4導入Tregは、ポリクローナルな野生型Tregが分化する競合条件下では肺所属リンパ節には集積し活性化するものの肺には集積できなかったが、ポリクローナルなA384T Tregとの競合条件下では肺にも集積しTh2型Tregに選択的に分化した。このことから、#4 Tregは野生型Tregとニッチを競合するために肺に集積できないのに対し、A384T変異によりニッチが空くことで肺に集積すると考えられた。
(2) Th1型Tregサブセット分化における抗原特異性の寄与:Th1型の表現型を示すTreg TCRクロノタイプ#1についてレトロジェニックマウス作製・解析を進めた。ポリクローナルな野生型Tregが分化する競合条件下で、#1導入TregはTh1型Tregに選択的に分化したことから、TCR配列(抗原特異的シグナル)依存的なTh1型Treg分化メカニズムの存在が示唆された。
(3) 末梢リンパ組織におけるTreg TCRレパトア選択機構:Tregの分化成熟段階を追ってTCRレパトアを比較した。その結果、Tregのレパトアは、末梢への移出や末梢での成熟よりも、活性化に伴い最も大きく変化することがわかった。さらに、活性化とともに増殖するTregクローンは個体間で異なるものの、個体間で共通して選択される、類似した配列からなるTCRクラスターが存在することを見いだした。このことから、これらTCRクラスターは個体間で共通する自己抗原を認識して選択される可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

着目しているTCRクロノタイプについて、研究計画に従ってレトロジェニックマウスの実験系を確立し、機能解析を進めてきた。クロノタイプ#1については、肺組織選択性はないものの、Th1型Tregに選択的に分化することを明らかにし、従来提唱されている抗原非特異的シグナル(サイトカインシグナル)によるTh1型Treg分化メカニズムとは異なった、抗原特異的シグナル依存的なTh1型Treg分化メカニズムが存在することを明らかにした。クロノタイプ#4については、肺組織選択的に集積・活性化し、Th2型Tregに分化すること、肺においてはポリクローナルな野生型Tregと競合することを見いだし、組織における「Tregニッチ」の存在を明らかにした。「Tregニッチ」の分子実体の一つは抗原であると考えられる。
また、これら当初計画した研究に加え、リンパ組織TregのTCRレパトア解析から、個体間で共通して増幅された、類似したTCR配列からなるクラスターを同定した。これらはエフェクター・メモリー型Tregに選択的に発現し、リンパ組織の樹状細胞に反応することを示唆する予備的知見を得ており、これら類似したTCRが共通の自己抗原を認識する可能性が示唆された。
以上の経緯・結果から、本研究は順調に進んでいると判断した。

今後の研究の推進方策

着目しているTCRクロノタイプにつき、TCRレトロジェニックマウスの作製・解析を進め、炎症抑制機能を賦与できるか検討する。また、詳細な解析を可能にするためにTCRトランスジェニックマウスの作製も進める。そして、これらTCRクロノタイプ(特に#4)を発現するTregがどのようなTCRを発現した通常型T細胞を抑制するのか、#4発現Tregの存在下と非存在下でA384Tマウス肺のTconvのTCRレパトア解析を行い、#4発現Treg存在下でクローン増殖が抑制されるTCRクロノタイプを同定する。抗原同定については、リンパ組織のエフェクター・メモリー型Tregに発現するTCRクロノタイプについては、末梢リンパ組織の抗原提示細胞に提示されたペプチド・ライブラリーのスクリーニングを行う。肺組織TregのTCRクロノタイプについては、和泉グループと共同研究を進め、肺組織から抽出したタンパク質をペプチドに断片化して分離・分取し、目的のTCRを発現させたハイブリドーマを活性化させる画分を同定し、そこに含まれるペプチドを質量分析により決定する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Diet-mediated constitutive induction of novel IL-4+ ILC2 cells maintains intestinal homeostasis in mice2023

    • 著者名/発表者名
      Cui Wanlin, Nagano Yuji, Morita Satoru, Tanoue Takeshi, Yamane Hidehiro, Ishikawa Keiko, Sato Toshiro, Kubo Masato, Hori Shohei, Taniguchi Tadatsugu, Hatakeyama Masanori, Atarashi Koji, Honda Kenya
    • 雑誌名

      Journal of Experimental Medicine

      巻: 220 ページ: e20221773

    • DOI

      10.1084/jem.20221773

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cathepsin W restrains peripheral regulatory T cells for mucosal immune quiescence2023

    • 著者名/発表者名
      Li Jian, Chen Zuojia, Kim Girak, Luo Jialie, Hori Shohei, Wu Chuan
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 9 ページ: eadf3924

    • DOI

      10.1126/sciadv.adf3924

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Regulation of T cell responses in health and disease2024

    • 著者名/発表者名
      Shohei Hori
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 制御性T細胞とアレルギー2024

    • 著者名/発表者名
      堀昌平
    • 学会等名
      日本アレルギー学会 第10回総合アレルギー講習会
    • 招待講演
  • [学会発表] GATA3 dysfunction in follicular regulatory T cells may underlie selective dysregulation of type 2 humoral immunity in Foxp3A384T mice2024

    • 著者名/発表者名
      Shiki Masumoto, Akira Nakajima, Shohei Hori
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Inhibition of AKT-mTOR signaling contributes to Foxp3-dependent induction of endogenous Foxp3 transcription in vivo2024

    • 著者名/発表者名
      Yuxi Wei, Hinako Ago, Shotaro Funatsu, Ryuichi Murakami, Akira Nakajima, Shohei Hori
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] MHC class II limits microbiota-dependent activation of colonic CD8 T cells in a CD4 T cell- and LAG-3- dependent manner2024

    • 著者名/発表者名
      Tomoya Sengiku, Masato Kubo, Shohei Hori, Ruka Setoguchi
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Overexpression of BATF enhances proliferative and suppressive activities of Treg cells in vivo2024

    • 著者名/発表者名
      Kohta Matsuura, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Foxp3A384T mutation represses Myc transcription without globally affecting chromatin accessibility in effector Treg cells2024

    • 著者名/発表者名
      Suzu Kawagoe, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] T cell receptor repertoires of regulatory and conventional T cells converge during differentiation into effector or memory states2024

    • 著者名/発表者名
      Reiko Tsukazaki, Ryuichi Murakami, Shohei Hori
    • 学会等名
      第52回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] 生体内におけるFoxp3依存的な内在性Foxp3の発現誘導メカニズム: AKT-mTOR経路抑制の寄与2023

    • 著者名/発表者名
      魏宇熙、吾郷日向子、船津翔太郎、村上龍一、中島啓、堀昌平
    • 学会等名
      第32回Kyoto T Cell Conference
  • [学会発表] TCR-mTORC1経路依存的なTreg固有のエピゲノム形成機構2023

    • 著者名/発表者名
      木下誠秀、大野真衣、早津徳人、大西玲子、中島啓、堀昌平
    • 学会等名
      第32回Kyoto T Cell Conference
  • [学会発表] MHCクラスII分子はCD4とLAG-3に依存して大腸CD8 T細胞の活性化 を制御する2023

    • 著者名/発表者名
      千菊智也、久保允人、堀昌平、瀬戸口留可
    • 学会等名
      第32回Kyoto T Cell Conference
  • [備考] 東京大学大学院薬学系研究科免疫・微生物学教室ホームページ

    • URL

      https://meneki.f.u-tokyo.ac.jp/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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