研究領域 | 法と人間科学 |
研究課題/領域番号 |
23101007
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 達哉 立命館大学, 文学部, 教授 (90215806)
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研究分担者 |
岡田 悦典 南山大学, 法学部, 教授 (60301074)
稲葉 光行 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80309096)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 法と心理 / 可視化 / 三次元モデリング / 自白供述 |
研究概要 |
本研究は複雑な事件における供述の変遷を分かりやすく提示することが主要な目的である。わかりにくさの要因としては、自白の変遷や複数人の供述対立、があげられる。こうしたわかりにくい供述変遷を、整理するための三次元可視化システムを開発したうえで、実用化する場合に生じる心理学上、刑事訴訟法上の問題を検討するのが本研究の目的である。本年度は以下の検討を行った。 第一に、再審請求を行なうことを目指す事件の調書の整理を行い、三次元キューブへの格納を行った。再審請求事例での、弁護方針発見ツールとしての有用性について、展望が開けた。またキューブを弁護士に提示し、その理解しやすさについて検討を行った。 第二に、民事訴訟への拡張を試みた。損害賠償訴訟などにおいて、複数人の請求者のライフストーリーを扱う事例について、個々人が被害をうけ訴訟を提起するに至るまでの径路の検討を行い、三次元キューブへの拡張を行った。 第三に、本システムが刑事訴訟法に照らしたとき、どのような法的地位を得ることができるのかについて引き続き検討した。アメリカにおけるComputer Generated Animationを巡る法律論について、改めて検討をおこない、三次元キューブの提示が、展示証拠となるのか実質証拠になるのか、について、それぞれの可能性を探った。日本におけるこうした法律論が立ち後れていることも確認した。 こうした検討を受けて、さらに本システムで扱う事例数を増やしているところである。これまで、裁判員裁判への適用を目指してきたが、公判廷での使用の追求は長期的に行い、再審請求事件や民事事件において、理解の促進を目指す補助ツールとして地位を確立することが望ましいという方向性が確認されつつあると確認した。ただし、三次元可視化システムの適用が可能かどうかを考慮しながら裁判実務での実装を目指していく立場には変わりはない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「三次元地層モデリングを用いた供述過程の可視化システムの構築」と題しており、法と心理学の学融的領域の研究と実践を行うものである。 2009年5月に裁判員制度が施行され2014年に5年目を迎える裁判員制度において、活用/実装することを目指して、心理学的、情報学的検討を加えてきた。それに加え刑事訴訟法的な検討も行ってきた。 心理学的、情報学的検討は順調に進んでいるが、刑事訴訟法的検討によれば、こうした新しい技術が裁判に実装されるかどうかは、乗り越えるべき問題が少なく無いことも分かってきた。 もっとも、裁判は、裁判員裁判だけではない。民事訴訟や再審請求訴訟にも、適用範囲を広げることで、当初の目的は達成されると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
三次元可視化システムの法的地位を確定させることが可能かどうかの検討を行いたい。また、適正な捜査のための可視化システム(捜査の録音録画)とのリンクを図り、より公正な裁判を行うための、法心理学的な支援システムを構築していく。 再審請求事例及び無罪追求事例における、供述精査ツールというような位置づけでの研究を行っていく。
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