研究領域 | 法と人間科学 |
研究課題/領域番号 |
23101007
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 達哉 立命館大学, 文学部, 教授 (90215806)
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研究分担者 |
岡田 悦典 南山大学, 法学部, 教授 (60301074)
稲葉 光行 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80309096)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 法心理学 / 可視化 / 裁判員裁判 / 展示証拠 |
研究実績の概要 |
本研究は複雑な事件における供述の変遷を分かりやすく提示することが主要な目的である。わかりにくさの要因としては、自白の変遷や複数人の供述対立、があげられる。こうしたわかりにくい供述変遷を、整理するための三次元可視化システムを開発したうえで、実用化する場合に生じる心理学上、刑事訴訟法上の問題を検討するのが本研究の目的である。本年度は前年度までに引き続き以下の3点について研究を行った。 第一に、既に死刑が行われた事件の再審請求を行なうための調書の整理を行い、三次元キューブへの格納を行った上で事件の整理を試みた。この事件は再審請求者が死亡したため滞っていた事件だが新たな再審請求人が現れたため、事件分析を精緻化する必要が生じ、これを行った。第二に、これまで損害として認定されにくかった容貌の変化に関する損害賠償訴訟において、複数人の請求者のライフストーリーを聞き取り、それを人生径路として表現する研究を行い、三次元キューブへの拡張を行った。第三に、本システムが刑事訴訟法に照らしたとき、どのような法的地位を得ることができるのかについて引き続き検討した。アメリカにおけるComputer Generated Animationを巡る法律論について、改めて検討をおこない、三次元キューブの提示が、展示証拠となるのか実質証拠になるのか、について、それぞれの可能性を探った。また、「展示証拠」(demonstrative evidence)の利用をめぐる法的課題の最新状況についても検討した。今回開発しているキューブが法廷で利用されるかどうかについては疑問符がつく結果となったが、一方で、分析ツールとしては有効であることが分かった。 以上の3点に加え本年度はさらに、三次元キューブの汎用性を高めるために、エクセルファイルから自動的にキューブにデータ格納する方法を開発している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
刑事裁判の公判において用いるのは難しいとさらに分かりつつあるが、一方で、分かりやすい裁判の準備に用いることには希望がでてきた。心理学者がデータ入力を請け負わなくても弁護士が自身で利用できるシステム開発の可能性もでてきた。民事裁判での適用例も増えつつある。全体として計画は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
1 複雑な再審事件のデータ整理法の開発を進める。また、分かりやすさについても検討を行う。 2 民事訴訟における活用法を開拓する。 3 三次元キューブシステム利用に関する刑事訴訟法だけでなく民事訴訟法の検討を行う。 4 以上に加え、弁護士など現場の実践者が自分で利用するための補助システムを開発する。
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