研究領域 | 法と人間科学 |
研究課題/領域番号 |
23101011
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
石塚 伸一 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (90201318)
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研究分担者 |
赤池 一将 龍谷大学, 法学部, 教授 (30212393)
浜井 浩一 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (60373106)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 犯罪者 / 非行少年 / EBP / 危険性予測 / 処遇評価 / 裁判員裁判 / 矯正 / 更生保護 |
研究実績の概要 |
本研究は、犯罪者および非行少年の処遇の調査研究および政策提言に際して、心理学等の人間科学の知見をどのように活用すべきかを総合的に検討することを目的とする。上記の目的を達成するため、 総論研究、各論研究および意識調査の3つの研究セクターを設け、その有機的連関を意識して研究計画を遂行している。 総論セクター(石塚伸一)は、(1)方法論ユニットにおいて、刑事司法におる人間科学的知見の活用に関する方法論を調査研究している。諸外国の動向を踏まえ、広く方法論的諸問題を検討すると同時に、不定期の拘禁(保安処分や終身刑)の正当化の根拠とされる危険性予測や処遇評価の指標を分析検討している。(2)再犯予測ユニットにおいては、再犯予測と効果測定に関する比較研究を行なっており、現在、「危険性(リスク)」をキーワードに不定期の拘禁(保安処分、終身刑など)が正当化され、その対象領域が増大している現状を社会的文脈の中に位置づけようと試みている。(3)EBPユニットにおいては、エビデンス・ベイストの政策形成に寄与することを目標として、キャンベル共同調査の成果を翻訳し、ホームページや冊子で成果を公開している。 各論セクター(赤池一将)では、(1)発達障害、(2)性犯罪、(3)薬物依存ユニット、および(4)宗教意識について調査研究を実施している。 意識調査セクター(浜井浩一)では、 市民と専門家が「矯正と更生保護に対してどのような意識と期待を有しているか」についてのアンケート調査を実施する。現在、そのために準備作業を行なっている。 これらの調査結果を踏まえて、裁判員裁判の時代における市民のための矯正・保護と人間科学的知見の活用の関係について、そのあるべき姿を考察し、その成果を発表する。その際、U-StreamやFacebookなどの新しい情報媒体の活用を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、海外調査・国内調査・研究計画遂行のための会議等を行うほか、国の内外から研究者を招聘し、研究会・講演会・研修会等を開催した。全体として見ればおおむね順調に進展している。 総論セクターの方法論ユニットでは、不定期拘禁の正当化根拠とされる危険性予測や処遇評価の指標を分析検討した。フランスの保安処分(2012年)、アメリカの終身刑(2013年)などの海外調査を実施し、その成果の一部は、アジア犯罪学会(2012年8月ソウル)、欧州犯罪学会(2012年8月ビルバオ)、アメリカ犯罪学会(2012年11月シカゴ)などで報告した。再犯予測ユニットでは、再犯予測と効果測定に関する比較研究を行なっており、イタリア(2012年)、ノルウエー(2012年)、フランス(2012年)、ドイツ(2012・13年)、スペイン(2012年)、韓国(2012年)、アメリカ(2012年2月)などの海外調査を実施し、成果の一部は、刑法学会関西部会(2012年7月姫路獨協大学)共同研究「保安処分化する刑事罰と責任論・刑罰論の課題」において一部報告した。EBPユニットでは、津富宏の協力を得て、キャンベル共同調査の成果を翻訳し、ホームページで公開する(http://fuji.u-shizuoka-ken.ac.jp/~campbell/index.html)ほか、2冊の報告書を刊行した。 各論セクターでは、特に、薬物依存ユニットにおいて、5回の薬物依存症者回復支援者研修セミナーを開催し、第16回国際犯罪学会(2011年8月神戸)ではセッションとラウンド・テーブルを主催した。その成果は、『龍谷大学矯正・保護総合センター研究年報』第1号(2012年)、『矯正講座』第32号(2013年)、石塚伸一編著『薬物政策への新たなる調整――日本版ドラッグ・コートを越えて――』(日本評論社、2013年)などで公表している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画全体は、準備期(2011・12年度)、展開期(2013・14年度)および総括期(2015年度)に分かれてる。2013年度は、準備を終えて、本格的な展開に入ることになる。 総論セクターでは、これまでの研究の成果(方法論・再犯予測・EBP)を中間的にとりまとめ、その成果を各論研究の中で展開していくことになる。 各論セクターでは、性犯罪および薬物依存の研究にあってはかなりの成果を上げているが、発達障害および宗教意識の研究に若干の遅れが見られるので、このユニットを強化していく。 意識調査セクターでは、2014年度に「矯正と更生保護に対してどのような意識と期待」についてのアンケート調査を行なうの予定であるので、具体的な準備作業に入る。人材育成などについて若干の遅れがみられるので、本年度は、若手研究者や研究支援者の研修や組織化を進めながら、本格的な実証研究に向けての体制の整備を図りたいと考えている。 総括と成果の発表につては、する。その際、U-StreamやFacebookなどの新しい情報媒体の活用については、基本的なスキルは修得したが、なお、その技術をブラッシュアップする。
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