研究領域 | 法と人間科学 |
研究課題/領域番号 |
23101011
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
石塚 伸一 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (90201318)
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研究分担者 |
赤池 一将 龍谷大学, 法学部, 教授 (30212393)
浜井 浩一 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (60373106)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 犯罪者 / 非行少年 / EBP / 危険性予測 / 処遇評価 / 裁判員裁判 / 矯正 / 更生保護 |
研究概要 |
本研究は、犯罪者および非行少年の処遇の調査研究および政策提言に際して、心理学等の人間科学の知見をどのように活用すべきかを総合的に検討することを目的としている。上記の目的を達成するため、総論研究、各論研究および意識調査の3つの研究セクターを置き、前2者にはそれぞれユニットを設け、その有機的連関を意識して研究計画を遂行している。共同研究者は、石塚伸一、浜井浩一、赤池一将である。また、連携研究者として津富宏(キャンベル共同研究)および丸山泰弘(薬物依存回復支援)が研究に協力している。 研究期間を3期に分けている。【第1期(2011・12年度)体制確立期】 総論的研究を中心に刑事司法に人間科学の知見を活用する際の方法論的諸問題を明らかにした(①日本の行動科学現状、②諸外国との比較および③EBPの導入など)。これと併行して、これまでの研究実績も踏まえて、近年の刑事政策における重要なトピックである4つの問題を取り上げ、各論研究を進めた(①発達障害、②性犯罪者、③薬物依存症者および④刑事施設における宗教活動など)。【第2期(2013・14年度)展開期】 上記の調査研究を通じて明らかになった問題点を精査し、これらを踏まえ、人間科学的知見に関する一般市民と刑事司法の専門家との認識や期待の異同を分析検討することが主たる目標とする意識調査を実施する。第3期(2015年度)総括期】 上記の総論的および各論的な調査研究の結果を分析し、これと意識調査の結果とを比較検討することによって、裁判員裁判の時代における人間科学的知見の活用について、そのあるべき姿を検討し、具体的改善策を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)総論セクター ①方法論ユニットでは、刑事司法におる人間科学的知見 の活用に関する方法論を調査研究している。諸外国の動向を踏まえ、広く方法論的諸問題を検討すると同時に、不定期の拘禁(保安処分や終身刑)の正当化の根拠とされる危険性予測や処遇評価の指標を分析検討している。成果の一部は、アジア犯罪学会(2012韓国)、欧州犯罪学会(2012ビルバオ)、アメリカ犯罪学会(2012/2013)などの国際学会で報告した。②再犯予測ユニットでは、再犯予測と効果測定に関する比較研究を行なっている(赤池:2011)。イタリア、ノルウエー、フランス、ドイツ、スペイン、韓国、アメリカなどの海外調査を実施し、成果の一部はすでに公表している(浜井:2013、石塚:2012)。海外調査の成果は、刑法学会関西部会(2012年7月・姫路獨協大学)において、成果の一部を報告した(赤池/石塚:刑法雑誌2013)。③EBPユニットでは、キャンベル共同調査の成果を翻訳し、ホームページで公開し、その一部は冊子媒体で刊行している(津富:2012/2013)。 (2)各論セクター ①発達障害ユニットでは、発達障害を有する少年・成人の処遇に関する調査研究を実施している(浜井:2012)。②性犯罪ユニットでは、性犯罪者の処遇に関する調査研究を実施している。③薬物依存ユニットでは、薬物依存症者の処遇に関する調査研究を実施し、回復支援者研修セミナーを開催した(札幌、京都、川崎、沖縄、名古屋など)。国際犯罪学会(2011年8月・神戸)、アジア犯罪学会(2011年9月・韓国)で報告した。2012年12月には薬物検査問題に関する公開研究会を開催した。これらの研究の成果を学術書として刊行した(石塚編著:2013)。④宗教意識ユニットでは、刑事施設における宗教活動に関する調査研究を実施している(赤池=石塚編著:2012)。
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今後の研究の推進方策 |
(1)方法論ユニットでは、公開シンポジウム「〔刑事裁判と科学鑑定
〕和歌山カレー事件における科学鑑定の意味―わたしたちは、刑事裁判に何を求めてい るのだろう?
そして、法律家や科学者には・・・?」を開催し(2013 年8 月26 日)、その成果を発表した(2014年3月「龍谷法学」)。(2) 薬物依存ユニットでは、 新たな統一テーマ『ハーム・リダクション』の下、第12回および第13回の薬物依存症者回復支援セミナーを開催した(2013年10月19日京都/同月26・27日東京)、新たな挑戦を計画している。アジア犯罪学会(大阪)、犯罪社会学会、更生保護学会などで研究成果を報告する予定である。
(3)意識調査セクターでは、2014年度に、「市民と専門家が、矯正と更生保護に対してどのような意識と期待を有しているか」についての実証研究を2014年度には本格的な調査に着手する。同調査の準備のため【犯罪学研修会(シャル・ウイ・ドゥ・クリミノロジー?)】
「犯罪学リテラシー研修~あなたも、犯罪学をしませんか?~
Training Course for Criminology: Shall we do criminology?
を開催した(2014年3月:龍谷大学)。
今後も、犯罪学研究者の人材開発のため、同様の企画を実施する予定である。 これらの調査結果を踏まえて、裁判員裁判の時代における市民のための矯正・保護と人間科学的知見の活用の関係について、そのあるべき姿を考察し、その成果を発表する。その際、U-StreamやFacebookなどの新しい情報媒体の活用を予定し、その検討を始めている。
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