計画研究
これまで研究代表者は、フェライトと呼ばれる磁性酸化鉄のナノ粒子をコアに持つ高分散性ポリマー被覆型磁性ビーズ(半田ビーズ)を独自に開発し、薬剤などの生物活性を有する低分子化合物の標的タンパク質を単離・同定する技術を構築してきた。本研究課題では、半田ビーズを活用した薬剤標的タンパク質の単離・同定技術を多様な生物活性と複雑な構造を有する天然物リガンドに適用し、天然物リガンドが示す生物活性の作用メカニズムおよび天然物リガンド標的タンパク質の関与する生体反応の制御機構やシグナルネットワークの解明を目指す。平成24年度では脂溶性ビタミンの1種であるビタミンK2(vitamin K2; VK2)が示す抗がん作用の分子機構の解明に取り組んだ。VK2は血液凝固や骨形成に関与しているという生理活性に加えて、白血病や幹細胞がん由来の種々のがん細胞に対して抗がん活性を示すことが近年明らかにされている。VK2が示す抗がん活性はアポトーシス誘導などによるものと考えられているが、その標的タンパク質は不明のままであった。そこで、がん細胞を用いてVK2によるアポトーシス誘導経路を解析し、半田ビーズを利用したアフィニティ精製により、VK2特異的結合タンパク質としてミトコンドリア局在タンパク質であるBakを同定した。そしてBakの生化学的解析により、細胞内でVK2酸化体と共有結合を形成することでBakが活性化され、ミトコンドリアからのシトクロームcの放出とcaspaseの活性化を経て、アポトーシスが引き起こされることを明らかにした。以上の実験結果から、アポトーシス誘導に関与するVK2標的タンパク質としてBakを見出し、VK2によるアポトーシス誘導の分子機構の一端を解明することができた。
2: おおむね順調に進展している
これまで用いてきた半田ビーズに対する薬剤などの低分子化合物の固定化条件を天然物リガンドに適用し、天然物リガンド固定化半田ビーズを効率的に作製できるよう検討してきた。さらに、アフィニティ精製によって得られた結合タンパク質(群)の機能解析により、天然物リガンド標的タンパク質の同定、及び天然物リガンドが持つ生物活性の作用メカニズムの解明を進めてきた。平成24年度では、本研究領域の班員などと連携を取り、特異な生物活性を有するいくつかの天然物リガンドを用いて半田ビーズへの固定化を検討し、天然物リガンド固定化半田ビーズの作製に成功した。また、抗がん作用を示すとされているビタミンK2のアポトーシス活性に関与する標的タンパク質を明らかにし、作用メカニズムの一端を解明した。
半田ビーズに対する低分子化合物やペプチドなどのリガンド固定化条件を精査し、多様な官能基を有する天然物リガンドを効率的かつ確実に半田ビーズ上に固定化するための汎用的な手法の確立を目指す。天然物リガンド固定化半田ビーズを利用するアフィニティ精製により、細胞粗抽出液などの適切に調整されたタンパク質ライブラリーから天然物リガンドの結合タンパク質(群)を単離・同定する。得られた結合タンパク質(群)の生化学的解析などを通じて、天然物リガンドの標的タンパク質を同定し、天然物リガンドが持つ生物活性の詳細を明らかにする。
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