研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
23102003
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座教員 (50451935)
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研究分担者 |
中村 哲也 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座教員 (70265809)
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キーワード | 正常腸管上皮 / 初代培養 / 細胞移植 / 組織再生 / 炎症性腸疾患 / 薬剤排泄 / 薬物動態解析 / ライブ・イメージング |
研究概要 |
本年度は研究計画に基づき、以下の解析を行った。 (1)培養正常腸管上皮オルガノイドのイメージング技術の確立 マウス小腸の初代培養細胞で構成されるオルガノイドにつき解析を行い、以下を明らかとした。 1)腸管上皮に発現する排泄型トランスポーターであるP-Glycoproteinが個体内の生理的発現と同様に小腸初代培養オルガノイドの内面(管腔側)に発現が維持されていた。 2)小腸初代培養オルガノイドの外面(基底膜側)にP-Glycoproteinの基質であるRhodamine123を添加することにより、オルガノイド内面(管腔側)へのRhodamine123の集積をライブイメージングにより経時的に観察することが可能であった。 3)上記のP-Glycoproteinを介したRhodamine123の能動輸送は特異的阻害薬であるVerapami1の添加により、濃度依存的に遮断され、この動態をライブイメージングにより観察・解析することにより、P-Glycoproteinを介した能動輸送を予測する数理モデルを確立することが可能であった。 (2)培養正常腸管上皮オルガノイドの組織再生機能の解析 マウス大腸の初代培養細胞で構成されるオルガノイドにつき解析を行い、以下を明らかとした。 1)培地に添加する増殖因子により、Lgr5陽性の幹細胞分画を豊富に含むオルガイドとして長期培養が可能であった。 2)上記にて培養したオルガノイドを大腸炎モデルマウスの腸管内に移入することにより、損傷した潰瘍面を被覆する上皮として生着し、修復に貢献し得ることが明らかとなった。 上記成果は、腸管上皮初代培養オルガノイドが腸管を介した薬物動態解析のみならず、上皮再生治療へも応用可能なツールへと発展可能であることを示した画期的成果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、正常腸管上皮オルガノイドの機能を可視化するライブイメージング法を確立し、生理的に発現するトランスポーターの機能解析に応用可能であることを明確に示すことに成功した。さらに、培養条件の追求により、幹細胞を選択的に増殖する事が可能となり得ること、同培養法により増殖した細胞が正常腸管上皮を修復・構成し得ることを示したことにより、天然物リガンドを用いた幹細胞選択的初代培養、および天然物リガンドの腸管粘膜修復機能のスクリーニング系へと発展する可能性を提示した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、腸管初代培養オルガノイドをバイオスクリーニングへと応用する際には、高効率・選択的な培養条件の追求と確立が必須であり、継続的な培養条件の探求が求められる。既存の低分子化合物のスクリーニングのみならず、天然物リガンドのライブラリーを用いて本培養系の至適条件を更に追求することにより、高効率・簡便な培養系として発展し、広く普及させることが可能となると考えている。
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