計画研究
本年研究を推進した結果、以下の成果を得た。① 新規オルガノイド構築過程の可視化モデルの構築:1) 腸管幹細胞特異的遺伝子LGR5の発現制御下にEGFP-CreERT2を発現するマウス(LGR-EGFP-CreERT2マウス)とCre活性依存的にTdTomatoを発現するレポーターマウス(R26R-TdTomato)を交配することにより、Tamoxifen曝露による誘導下で幹細胞をEGFP, その娘細胞をTdTomatoで標識できるマウスを樹立した。同マウスより腸上皮オルガノイドを樹立することにより、オルガノイド構築過程における幹細胞及びその娘細胞を異なる蛍光蛋白を指標に経時的に追跡可能であった。これにより単一の幹細胞が娘細胞を供給しオルガノイドを構築していく過程の可視化モデルを確立した。② リガンド分子によるオルガノイド構築過程制御モデルの確立:腸管上皮初代培養系を用い、異なる複数の培養条件下で腸管上皮オルガノイドの構築過程並びにその構成細胞が如何なる制御を受けているか、検討を行った。その際、腸上皮を構成する幹細胞及び分化細胞マーカーであるMUC2(杯細胞),CgA(内分泌細胞),CD10(吸収上皮細胞), OLFM4(幹細胞), Ki67(増殖細胞)について、発現解析を行う系を確立した。同系を用いた解析の結果、複数の増殖因子を欠失しかつガンマセクレターゼ阻害活性を有するリガンド分子と共培養することにより、杯細胞の著しい増加が誘導可能であることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画に則り、オルガノイド構築過程について蛍光蛋白を指標にin vivoでイメージング追可能な系の確立に成功した。また同過程における幹細胞・分化マーカーの検出系を確立したことにより、オルガノイド構築過程における分化細胞の量的動態に加え、立体構造のにおける空間的配置の動態も解析が可能となる技術と考えられる。さらに、既知のリガンド分子により、同オルガノイドの構築における分化細胞の量的かつ立体配置を制御可能である可能性を示し得ていることから、腸管上皮初代培養を用いたこれら解析系の確立は、上皮細胞の増殖・分化の制御活性を有する天然物リガンド探索の新たなツールへと発展することが期待される。従って本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
本年度確立したオルガノイド構築の経時的解析モデルについて、特殊蛍光観察によるタイムラプスイメージングにより、1細胞レベルでの動態を更に詳細かつ簡便な観察系へと発展させることを目標に、観察系の構築を進めている。同モデルを用いて異なる遺伝子変異の誘導によるオルガノイド構築の動的変化についての検討を進めるとともに、腸管上皮幹細胞機能や娘細胞の増殖・分化制御について、活性を有する天然物リガンドの探索系として確立することを目標に、発展させる計画である。
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