生理活性化合物の多くは、生体内での標的分子や作用機構については十分な理解がされないまま残されてきているが、高機能な化合物の開発には標的分子および作用機構の理解が不可欠である。本研究の目的は、ゲノミクスを中心とするオミクス技術を用いることにより、生理活性化合物の生物学的な評価を行うとともに作用機構の解明を目指すことある。生理活性化合物のIN VIVOにおける評価を行うために、まずマウスを用いて生理活性化合物の投与を行い、指標とする組織における影響をDNAマイグロアレイを用いた遺伝子発現変化の解析から評価しており、また幅広く生理活性を評価するために、異なった生体システムを有する甲殻類(DAPHNIA)を対象として、同様にゲノミクスからの解析及び評価を行っている。甲殻類(DAPHNIA)は昆虫とも近縁で哺乳類とは大きく異なる生体システムを有していることから、マウスなどでは見出しにくい化合物の影響を見出せる可能性がある。標的分子の作用点に近いゲノミクスを中心としたアプローチを2種類の生物種を対象として解析することで、生理活性化合物の総合的な評価をめざしている。特に今年度は甲殻類(DAPHNIA)を対象としてセスキテルペンに対する応答を解析し、遺伝子発現変化に及ぼす影響およびその表現型について解析を進めた。一方、マウスにおいてはステロイド骨格を有する化学物質対してレポーター遺伝子の発現が誘導されるトランスジェニックマウスを導入し、ゲノミクス解析と統合した解析を行う基盤を構築した。
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