研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
23102005
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 資正 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40116033)
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キーワード | 活性天然物 / 海洋薬物資源 / ケミカルバイオロジー / 標的分子 / 医薬シーズ |
研究概要 |
本年度は研究計画に基づき、まず、様々な活性物質に簡便に適用できる系統的かつ一般的なプローブ分子の合成法の確立を目指した検討を行い、システインを母核とするプローブ分子素子を創製することに成功した。マレイミドに対するチオールの付加という官能基選択性の非常に高い反応を利用することで、種々の官能基を有する活性天然物についても簡便に誘導化してプローブ分子を合成することが可能な汎用性の高い手法である。 一方、プローブ分子にタンパク質とより強固に相互作用するための捕捉補助基としてボロン酸を分子中に組み込んだ次世代型プローブの開発を検討した。生体内ペプチドであるグルタチオンを活性物質のモデル化合物として用い、今回開発した系統的合成法により、構造を種々変換したプローブ分子を簡便に合成することができたので、これに結合するグルタチオンSトランスフェラーゼとの親和性を基準にプローブ分子の性能評価を行った。その結果、活性物質(グルタチオン)と捕捉補助基(ボロン酸基)との距離が、標的分子(グルタチオンSトランスフェラーゼ)との親和性に大きな影響を及ぼすことを明らかにすることができた。 また、以前より我々は、化合物の標的分子を高発現させた形質転換細胞は、化合物に対して耐性を示すという考えのもと、cDNAライブラリーを利用する動物細胞に作用する活性天然物の標的分子の解析を検討しているが、今回、これをさらに効率良く標的分子の解析が行える方法論に発展・改良させるため、動物細胞内でも複製され、安定形質転換細胞が簡便に作成できるepisomal型発現ベクターでcDNAライブラリ―を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性天然物を含む様々な活性物質の標的分子を捕捉・同定するためのプローブ分子を簡便に合成できる系統的かつ一般的な合成法の確立に成功するとともに、グルタチオンをモデル化合物に用いて実際に種々のプローブ分子を合成し、機能評価を行うことで、その有用性を確認することができたこと、また、cDNAライブラリーを利用する動物細胞に作用する活性天然物の標的分子の解析法を改良できたことなど、当初の研究計画を順調に達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で確立したプローブ分子の系統的合成法を用いて、以下の検討を進める。 1)プローブ分子にタンパク質とより強固に相互作用するための捕捉補助基としてボロン酸を分子中に組み込んだ次世代型プローブの有用性をさらに高めるため、ボロン酸基の構造を種々変換したプローブを合成して機能評価を行うことで、より捕捉能の高いプローブ分子の創成を目指す。 2)実際に標的分子が未知の活性天然物へ適用し、プローブ分子を合成する。具体的には、以前に我々が見出した、強力な血管新生阻害作用を有する新規アルカロイドcortistatin A由来の構造単純化アナログ化合物、および低酸素環境選択的がん細胞増殖阻害物質furospinosulin-1に本法を適用し、アフィニティープローブ分子を合成する。また、これらを用いて、結合タンパク質同定に向けた基礎検討を開始する。
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