研究概要 |
疾患の発症シグナル伝達に作用する小分子化合物(リガンド)はその疾患の発症機構解明の有用なバイオプローブとなるだけでなく,疾患治療薬シードとなる.本課題ではがんおよびパーキンソン症の3種類の疾患モデル系を用いて天然物リガンドの探索・創製とその作用機構解析を通した疾患シグナル伝達の解明を目的とした. 1)EGF依存的に細胞死を誘導する天然物リガンド 放線菌1864-66株が生産するEGF依存的に細胞死を誘導する天然物リガンドの大量培養をおこない,天然物リガンドの単離精製に成功した.現在,全合成による構造解析の確認中である. 2)上皮-間葉転換(EMT)を制御する天然物リガンド TGF-βによって間葉系に誘導したヒト大腸がん細胞LoVo細胞に微生物培養液を添加し,上皮の形態に戻す物質を探索下結果,RNA合成阻害剤がヒットした.一方,ヒト繊維肉腫細胞HT1080cellsを用いたMET誘導物質の探索系を新たに構築し,これら2つのアプローチによってMETを誘導する天然物リガンドを探索した結果,一放線菌株の目的の活性を見いだした. 3)神経細胞斑点形成を制御する天然物リガンド NGFで分化させたPC12D細胞にMPP+(0.3mM)処理することで誘導される斑点形成を阻害する化合物を微生物培養液から探索したが,目的の活性を示す微生物培養液はいままでのところ得られていない.
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