研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
23102007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松永 茂樹 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60183951)
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研究分担者 |
高田 健太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90455353)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗がん性 / 細胞周期 / カイメン |
研究実績の概要 |
多くのがん化学治療薬は、DNAや細胞周期に関連するタンパク質を標的としており、がん細胞の細胞周期の停止および細胞死を引き起こす。そのため、細胞周期を停止する海洋天然物は、創薬のシードとして期待される。そこで、細胞周期を可視化する蛍光プローブが導入されたFucci2-HeLa細胞を海洋天然物の活性評価に応用した。まず、当研究室で単離および構造決定を行った29種の海洋天然物のFucci2-HeLa細胞に対する作用を評価した。化合物種によって細胞周期への作用や細胞が示す形態は異なっていた。顕著な例として、onnamide BがS/G2期で細胞周期の停止を誘導した。これらの結果から、Fucci2-HeLa細胞を用いた活性評価系の有用性が支持された。そこで、約1000種類のカイメン抽出エキスライブラリーをスクリーニングしたとこと、S/G2期での細胞周期停止を特異的に誘導する試料を20種選別した。これらの試料を対象として、活性成分の単離・構造決定を順次進める予定である。まず、最初に用いたのは宮古曽根で採取したカイメンSpongia sp.で、抽出物を溶媒分画、フラッシュクロマトグラフィーおよびHPLCに付して、5種類の化合物を単離した。このうちの3種は過去にカイメンから見いだされたmetachromin C、J、およびTであった。今回得られた2種類の新規化合物をmetachromin XおよびYと命名し、それらの構造決定を、NMR、質量分析、化学誘導体化およびキラルカラムを用いたHPLCなどにより行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗腫瘍性と密接に関係する細胞周期への化合物の作用を効率よく検出して、抗がん剤のリード化合物の発見を迅速化できるFucci2細胞による試験系を導入し、化合物の探索を始めた。従来から継続して行っている、がん細胞に対する細胞毒性物質の探索によっても、新規化合物の発見が行えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記試験系を用いて、新規抗がん剤のリート化合物の探索を積極的に進める予定である。
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