研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
23102008
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石橋 正己 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90212927)
|
研究分担者 |
荒井 緑 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40373261)
當銘 一文 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80563981)
|
研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 生理活性 / シグナル伝達 / 有機化学 / 薬学 / 蛋白質 |
研究概要 |
当研究室に保有する天然物抽出エキスコレクションを用いて,ウィント(Wnt),ヘッジホッグ(Hh),トレイル(TRAIL),bHLH転写因子等のシグナル分子を標的とした天然物の探索および活性化合物の作用メカニズムの解析に関する研究を行った. 1. Wntシグナルを標的としたスクリーニングにより,ガガイモ科Calotropis gigantea滲出物からは単離したcalotropinについてそのWntシグナル阻害作用に関する解析を行った.calotropinはプロテアソーム系においてβ-cateninの分解を促進することによりWntシグナルを阻害する. calotropin の添加によりβ-cateninのS45リン酸化,すなわちCK1αによるリン酸化の上昇が認められた.また, RNAiによりCK1αをノックダウンした細胞においては, calotropinによるCK1αの増加および β-cateninのS45リン酸化は観察されなかった. さらにリアルタイムPCR法によりcalotropinの添加によりCK1α mRNAの増加が認められた. 以上より, calotropinはCK1αをmRNAレベルで増加させβ-cateninのリン酸化を促進することによりβ-cateninの分解を促進し, Wntシグナルを阻害することが示唆された. 2. TRAIL耐性克服作用に関するスクリーニングにより,タイ産植物Artocarpus communis(クワ科)の根部抽出物より12 種の化合物を単離した.そのうちartonin Eは3 μM において,単独処理と比較してTRAIL(100 ng/mL)との併用により24 時間後細胞生存率を45%低下させる顕著なTRAIL耐性克服作用を示した.artonin Eのカスパーゼを介するアポトーシス誘導には活性酸素種(ROS)が関与することが示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウィント,ヘッジホッグ,トレイルおよびbHLH転写因子等に対するスクリーニング研究の成果として,タイおよびバングラデシュ産植物,および放線菌からから数多くの活性化合物を単離した.それらの中には新規化合物も数種含まれていた.また,数種の代表的な活性成分に対する作用機構の解析を行い,興味深い知見が得られた.
|
今後の研究の推進方策 |
ウィント,ヘッジホッグ,トレイル,およびbHLH転写因子等のシグナル経路に関してさらに継続してスクリーニング研究を行っていく.これまでに得られた活性成分の中から,とくに興味深い作用を示すことが期待される代表的な化合物を数種選別し,それらについての作用メカニズムを分子レベルで解析する実験をさらに進展させる.とくに,Wntシグナル阻害成分calotropinやTRAIL耐性克服作用を示すアポトーシス誘導活性成分artonin Eについてシグナル経路の構成分子への影響や標的分子を解明に向けて検討する.
|