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2012 年度 実績報告書

高活性グルタミン酸リガンドの創製

計画研究

研究領域天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御
研究課題/領域番号 23102009
研究機関大阪市立大学

研究代表者

品田 哲郎  大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30271513)

研究分担者 大船 泰史  大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20142078)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2016-03-31
キーワードグルタミン酸受容体 / カイトセファリン / アクロメリン酸 / リガンド / ケミカルバイオロジー
研究実績の概要

天然由来のグルタミン酸受容体結合リガンドである、カイトセファリンおよびアクロメリン酸Aを題材に、標的探索・超単純化アナログの創製を目的とする、ケミカルバオロジー研究を行った。カイトセファリンについては、前年度までの構造活性相関研究により、活性発現に重要な役割を果たす部位でありかつ、アンタゴニスト活性発現を担うと予想される芳香環部位について、構造活性相関研究を進めた。その結果、芳香環上の置換基(水酸基、クロロ基)を取り払っても、活性がある程度維持できることがわかった。

合成と活性評価に依存したカイトセファリンの構造活性相関研究を、より精度よく進めるために、受容体とカイトセファリンの共結晶を作成し、X-線結晶構造解析を行った。その結果、NMDA型受容体ときわめて構造が類似しているAMPA受容体との共結晶構造の解析に成功した。これによりカイトセファリンの受容体結合様式に関する精密構造情報が得られた。

アクロメリン酸Aの全合成研究をH24年度に引き続き、推進した。前年度までに確立した、アクロメリン酸Aの芳香環部位(ピリドンカルボン酸)構築法を基盤として、ヨウ素体あるいはスズ置換体へと導いた。これらをアクロメリン酸Aの母核であるピロリジン環部とクロスカップリング反応により連結することを想定した。その鍵となる、クロスカップリング反応の類例がなかったので、まず、基礎的知見を得るためのモデル実験を行った。鈴木・宮浦反応、根岸カップリング、薗頭反応、Stilleカップリング、Heck反応など、各種クロスカップリング反応を検討した結果、根岸カップリング反応以外において、良好にカップリング生成物を得ることができた。また、この検討の際中に、薗頭反応条件下、新規な多成分カップリング反応が進行することを、あわせて見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

カイトセファリンの構造活性相関研究は、受容体との共結晶構造解析が進んだことにより、これまで合成と活性評価に依存していた構造活性相関研究を、複合体の精密構造をもとに、より高い精度で進めることが可能になった。この点は、予想を超えた大きな進展である。また、芳香環部位の構造活性相関研究を別途進めた結果、活性発現に必要な芳香環上の置換基群を特定できた。これにより、次のフェイズである超単純化高活性アナログ創製に向けた有用な情報を得ることができた。

アクロメリン酸Aについては、合成課題の解決にやや遅れが認められている感があるものの、着実な条件検討を重ねたことで、目標に掲げたクロスカップリングによるリガンド供給への目途が立ったと考えている。これについては引き続いて、検討を行うことで解決できると考えており、できるだけ早期に全合成経路を確立し、活性を調べる研究へと駒を進める予定である。

今後の研究の推進方策

複合体の結晶構造解析に基づき、カイトセファリンの芳香環部位に焦点を当てた構造活性相関研究を展開する、これにより超単純化高活性アナログ創製を前に進める。具体敵方策として、カイトセファリンの複雑な基本骨格を単純な鎖状骨格に置換した、C8~10のジアミノジカルボン酸類の片方のアミノ基をアシル化した分子を合成する。設計分子を光学活性体として合成するためには、任意に不斉中心を作り分ける合成方法論が必要である。現在この点について、試薬制御による不斉合成研究を先行して検討しており、その結果を踏まえつつ、目的物の合成を進める。合成アナログは、イオンチャネル型グルタミン酸受容体との結合活性試験により、サブタイプ選択性などの活性特性を順次解析する。アクロメリン酸Aについては、クロスカップリング反応における基礎的知見を得ることができているので、その結果をもとに、Stilleカップリング反応による母核炭素骨格の一段階合成から、生物活性評価に十分なリガンドを供給する。アクロメリン酸Aは標的が未同定であるため、カップリング反応を基礎とする構造活性相関を行う。研究体制として、研究統括:品田哲郎、研究分担:大船泰史(分子設計・構造活性相関情報解析)、連携研究者:島本啓子(分子設計、アッセイ、情報解析)、連携研究者:坂口和彦(設計分子の合成)に加えて、合成研究を担う大学院生を5名に増員し、円滑にプロジェクトを進めてゆく計画である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Efficient Total Synthesis of Manzacidin B2012

    • 著者名/発表者名
      K. Oe
    • 雑誌名

      Tetrahedron Lett.

      巻: 53 ページ: 3250-3253

    • DOI

      org/10.1016/j.tetlet.2012.04.042,

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Structure of (-)-Kaitocephalin Bound to the Ligand Binding Domain of the (S)-α-Amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic Acid (AMPA)/Glutamate Receptor, GluA22012

    • 著者名/発表者名
      A. H. Ahmed
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 287 ページ: 41007-41013

    • DOI

      10.1074/jbc.M112.416362

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Efficient Synthesis of Anhydrorhodovibrin and Analogs2012

    • 著者名/発表者名
      T. Yamada
    • 雑誌名

      Synlett

      巻: 23 ページ: 2980-2984

    • DOI

      10.1055/s-0032-1317678

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Total Synthesis of Manzacidins. An Overview and Perspective2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Ohfune
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 85 ページ: 2617-2649

    • DOI

      10.3987/Contents-12-85-11

    • 査読あり
  • [学会発表] シクロプロパン環を導入したジアミノピメリン酸の合成研究2013

    • 著者名/発表者名
      若林由華
    • 学会等名
      日本化学会第93春季年会
    • 発表場所
      立命館大学びわこ・くさつキャンパス
    • 年月日
      2013-03-22 – 2013-03-25
  • [学会発表] 電子不足オレフィンとフラン誘導体を用いたシクロプロパン化反応2013

    • 著者名/発表者名
      松本遼太郎
    • 学会等名
      日本化学会第93春季年会
    • 発表場所
      立命館大学びわこ・くさつキャンパス
    • 年月日
      2013-03-22 – 2013-03-25
  • [学会発表] クロスカップリング反応を利用した3 位置換-2-ピリドン-6-カルボン酸の合成研究2013

    • 著者名/発表者名
      御前公美
    • 学会等名
      日本化学会第93春季年会
    • 発表場所
      立命館大学びわこ・くさつキャンパス
    • 年月日
      2013-03-22 – 2013-03-25
  • [学会発表] デヒドロアミノ酸の立体制御に基づく生物活性天然有機化合物の全合成研究2013

    • 著者名/発表者名
      品田哲郎
    • 学会等名
      関学化学フォーラム
    • 発表場所
      関西学院大学神戸三田キャンパス
    • 年月日
      2013-01-28
    • 招待講演
  • [学会発表] Synthetic Study of Tetrodotoxin2012

    • 著者名/発表者名
      A.Manabe
    • 学会等名
      the Twelfth International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry (IKCOC-12)
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      2012-11-12 – 2012-11-16
  • [学会発表] Synthesis of Diaminopimelic Acid Derivatives and Their Biological Activity2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Wakabayashi
    • 学会等名
      the Twelfth International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry (IKCOC-12)
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      2012-11-12 – 2012-11-16
  • [学会発表] 置換ピリドンカルボン酸類の新規合成法の開発2012

    • 著者名/発表者名
      品田 哲郎
    • 学会等名
      第42回複素環化学討論会
    • 発表場所
      京都テルサ
    • 年月日
      2012-10-11 – 2012-10-13
  • [学会発表] 光学活性ピロリンの簡便な合成法の開発2012

    • 著者名/発表者名
      大江健太郎
    • 学会等名
      第42回複素環化学討論会
    • 発表場所
      京都テルサ
    • 年月日
      2012-10-11 – 2012-10-13
  • [学会発表] スクアリン酸含有アミノ酸を組み込んだ新規ペプチドアナログ合成2012

    • 著者名/発表者名
      前田健太郎
    • 学会等名
      第54回天然有機化合物討論会
    • 発表場所
      東京農業大学世田谷キャンパス
    • 年月日
      2012-09-18 – 2012-09-20
  • [学会発表] 立体配座を固定した2,6-ジアミノピメリン酸誘導体の合成研究2012

    • 著者名/発表者名
      若林由華
    • 学会等名
      第39回有機反応懇談会
    • 発表場所
      関西大学吹田キャンパス
    • 年月日
      2012-08-03
  • [学会発表] 非天然型アミノ酸構造を有する天然有機化合物の全合成研究2012

    • 著者名/発表者名
      品田哲郎
    • 学会等名
      第39回有機反応懇談会
    • 発表場所
      関西大学吹田キャンパス
    • 年月日
      2012-08-03
    • 招待講演
  • [図書] 「藻類ハンドブック」2012

    • 著者名/発表者名
      大船泰史
    • 総ページ数
      768
    • 出版者
      NTS inc.
  • [備考] 大阪市立大学大学院理学研究科物質分子系専攻分子変換学研究室

    • URL

      http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/chem/henkan/index.html

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公開日: 2018-02-02  

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