研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
23102009
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
品田 哲郎 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30271513)
|
研究分担者 |
大船 泰史 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (20142078)
|
研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
|
キーワード | グルタミン酸 / グルタミン酸受容体 / カイノイド / カイトセファリン / アナログ合成 |
研究概要 |
天然由来のグルタミン酸受容体リガンドである、カイトセファリンおよびアクロメリン酸のケミカルバイオロジー研究により、高活性グルタミン酸受容体リガンドを創製することを目的とする。H25年度は(1)カイトセファリンアナログの合成と活性評価と(2)カイノイド類の新規合成法の開発を検討した。 (1)カイトセファリンアナログの合成と活性評価:カイトセファリンとイオンチャネル型グルタミン酸受容体結合ドメインとのX線結晶構造解析から、カイトセファリンの芳香環部位を標的としたアナログを設計し、それらの合成を行った。現在、合成アナログのイオンチャネル型グルタミン酸受容体との結合活性を評価している。また、カイトセファリンが受容体と結合する際に、最小限必要と思われる官能基を備えたアナログ(炭素鎖8のジアミジカルボン酸アナログ)の合成にも取り組んだ。標的化合物には2つの不斉中心が存在するため不斉中心を作り分ける手法を開発することにした。その結果、ビスデヒドロアミノ酸エステルの触媒的不斉還元反応を行うことにより望む立体化学が制御できた。 (2)カイノイド類の新規合成法の開発:前年度までに、アクロメリン酸を構成する複素環単位の1つであるピリドンカルボン酸ユニットを効率的に合成する経路を確立している。これをもとにピリドンカルボン酸と置換プロリンとのカップリングを検討した。しかし低収率に終わった。この点を解決する方法として、新たに4成分カップリング法に取り組んでいる。これとは別に、活性発現に重要な「4位」にさまざまな官能基を導入する合成法の開発にも取り組んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイトセファリンのケミカルバイオロジー研究においては、芳香環に炭素鎖を導入したアナログを合成できた。予備的な活性評価において、新規アナログがカイトセファリンとは異なる生物活性挙動を示すことが確認できている。現在、その薬理学的詳細についてさらに検討を進めており、今後の展開に大きな期待がもたれる。 アクロメリン酸の合成研究では当初予定していた合成計画がうまくいかなかったため、新たな合成経路の開発に取り組んだ。アクロメリン酸の合成研究ではピリドンカルボン酸ユニットを含む4成分連結法を試みた。これまでに3成分の連結まで達成できており、全合成の完成に向けての足場が構築できたと評価している。カイノイドアナログ合成では、活性発現に重要な役割を果たす4位にさまざまな官能基を付与可能なカイノイド骨格の短段階合成に取り組んだ。デヒドロアミノ酸から導かれるヨウ素体から、分子内Heck反応にてピロリジン環を構築する方法に取り組んだが、目的物はわずかに得られるのみであった。この点はラジカル環化の適用によって解決できたことは、合成研究を進める上で大きな前進であったと評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
<カイトセファリンのケミカルバイオロジー研究> 芳香環を標的とするリガンド分子の合成と活性評価研究を引き続き行う。具体的には、蛍光標識化や標的同定を可能にする官能基群を導入したアナログを設計し、その合成と活性評価を試みる。カイトセファリン構造単純化アナログとして設計したC8のアナログの合成を完了し、それらの生物活性を評価する。あわせて、C9あるいはC10アナログの合成を検討する。現在、核磁気共鳴スペクトルを用いた溶液状態におけるカイトセファリン・タンパク質結合状態を共同研究にて解析中であり、合成・活性評価研究の結果とあわせて、高活性アナログの分子設計をさらに進化させる。 <カイノイド類のケミカルバイオロジー研究> アクロメリンAの合成研究では、4成分カップリング合成を検討する。本経路では会喉骨格の3位への酢酸残基の導入が鍵となる。まず、モデル研究を実施し、導入のための反応条件を確立する。これを全合成に反映させることで目的とする全合成を早期に完成させる。カイノイドアナログの合成研究では、H25年度に確立したカイノイド骨格構築法を用適用して、さまざまな新規カイノイドアナログを合成する。合成でき次第、グルタミン酸受容体との結合活性を評価する。
|