研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
23102010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邉 秀典 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00202416)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌細胞転移阻害 / 抗マラリア活性 / 抗菌活性 / UTKO1 / Anthecularin / Neurymenolide |
研究実績の概要 |
癌細胞転移阻害活性物質であるUTKO1については、まず4つの立体異性体を合成した。これを用いて標的タンパクである14-3-3ζとの共結晶を得てそのX線結晶解析により14-3-3ζのどこにどのように結合するかを明らかにする研究が現在進行中であり、その結果に非常に期待が持てる段階まで来ている。これによりより高活性を示す類縁体の設計が可能になると思われる。また、ビオチン標識体と蛍光標識体も合成した。これらを用いて慶應義塾大学井本正哉教授との共同研究により、ホヤ発生時の脊索形成阻害に関わる標的タンパク質も明らかにすることが出来た。 Anthecularinは二重結合やラクトン部分に関する類縁体を合成することに成功した。これらを用いて抗マラリア活性を示す上での構造-活性相関を明らかにすべく理化学研究所の長田裕之博士との共同研究が進行中である。 また、抗菌活性を示すNeurymenolideについては全合成達成のための重要なステップをクリアし、近い将来合成を完了する予定である。また、重要な骨格部分である大環上部分の構造が活性に対してどのように影響するかを明らかにするため、分離したアトロープ異性体を用いた類縁体合成も着実に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の様な成果が得られたので今年度の目標はほぼ達成出来たものと考える。 UTKO1について:①4つの立体異性体に成功したこと。これにより14-3-3ζとの共結晶を得ることが可能となった。②ビオチン標識体と蛍光標識体も合成し、ホヤ発生時の脊索形成阻害に関わる標的タンパク質も明らかにすることが出来たこと。 Anthecularinについて:達成した全合成ルートを用いて二重結合やラクトン部分に関する類縁体を合成することに成功したこと。これにより抗マラリア活性のための構造-活性相関の解明はもちろんのこと、リガンド解明のための標識体の設計が可能となる。 Neurymenolideについて:全合成達成のうえで重要なクライゼン転位反応物の炭素鎖伸長に成功し、目的化合物のほぼ全骨格を組み上げることに成功したこと。
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今後の研究の推進方策 |
UTKO1とAnthecularinについては、共同研究の進捗状況や新たな知見を加味しながらさらなる高活性物質の創製や作用メカニズムの解明を継続していく予定である。 また、Neurymenolideは全合成達成後に合成中間体を用いた標識体合成へと展開していく予定である。 さらに、ウニの不等分裂を阻害するExiguamideや抗腫瘍活性物質であるPlumisclerin Aなどの生物活性天然物の合成と標識体合成による作用メカニズムの解明を展開していく予定である。
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