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2014 年度 実績報告書

生物現象を誘起する新規内因性分子作用機構

計画研究

研究領域天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御
研究課題/領域番号 23102012
研究機関東北大学

研究代表者

上田 実  東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60265931)

研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2016-03-31
キーワードジャスモン酸グルコシド / 就眠運動 / イオンチャネル / 活性酸素 / ウワバゲニン
研究実績の概要

昨年度は、アメリカネムノキの就眠運動を誘導するジャスモン酸グルコシド(JAG)、ならびにオキシステロール類であるウワバゲニンの作用機構並びに、標的に関する研究を行った。
JAGが就眠運動を引き起こす際の作用機構解明のために、標的細胞である運動細胞へJAGを投与した際の細胞応答を検討した。その結果、活性酸素種がセカンドメッセンジャーとして作用すること、ならびに、活性酸素種が就眠運動のメインプレイヤーとして見出した外向きカリウムチャネルSPORK2の活性化を引き起こすことを見出した。JAGによって発生したセカンドメッセンジャーがチャネルを活性化することで就眠運動が起こる。残念ながら、アメリカネムノキはモデル生物でないため、遺伝子改変をおこなうことができない。このため、異種発現系による標的バリデーションに加えて、カルスからの個体再生系を用いた遺伝子導入植物の作出を検討している。ジャスモン酸類を認識し、輸送する膜タンパク質を同定することにも成功した。
ステロイド配糖体の一種ウワバインは、ヒト内因性リガンドとして血圧調節に関与すると考えられている。一方、そのアグリコンであるウワバゲニンは、これまで全く活性を持たない不活性体と考えられていた。我々は、ウワバゲニンが、核内受容体のうち、LXRに作用することを見出した。LXRのアゴニストはENACの発現を抑制することで血圧上昇を抑えるする報告があるので、ウワバゲニンについて同様の検討を行ったところ、同じくENACの発現抑制活性が確認された。また、この活性は、ウワバゲニンがLXRβサブタイプに作用することが原因であることを培養細胞を用いるサブタイプ特異的ノックアウト実験から明らかにした。一連の研究を通じて、活性未知のリガンドに関して、標的同定から新規活性を見出すことに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

天然物リガンドの標的探索のための方法論として、コンパクト分子プローブ法とアフィニティービーズ法の有効性を検討している。現在の所、いずれにも一長一短があること、またリガンドと標的間に共有結合を形成するシステムの構築が、微量標的には必須であることが明確になってきた。これは、研究当初の目的である方法論のスコープ&リミテーション探索に関する有用な情報である。標識化収率の向上が必須の課題であるため、天然物リガンド構造中に反応性官能基を埋め込むなど新たな分子設計を検討している。現在は、生物現象を誘導する天然物リガンドに関する標的バリデーションに関する検討を行っているが、異種発現系の利用などを含め検討中である。
標的既知の天然物リガンドを用いて、タンパク質間相互作用をサブタイプ選択的に誘導するアゴニストの開発に関しても成果が得られつつあり、今後、全サブタイプを網羅する評価系を構築して開発を進める。
また、ステロイド化合物を対象として、探索した標的をもとに未解明の作用機構を見出しつつある。活性が報告されていない天然物リガンドについて、標的探索から新規活性を見出すことに成功し、新規生物活性物質の探索に関する新しい可能性を開くことができた。

今後の研究の推進方策

今後は、天然物リガンドの標的と作用機構に関するバリデーション実験を行い、成果を完成させる必要がある。標的想定に関して、旧来の光親和性標識化の低収率は大きな問題である。このため、標識化収率向上のために、リガンド構造に改変を加える方法について検討を行う。一方で、標的が既知のリガンドを用いて、遺伝的重複を解決できるサブタイプ特異的アゴニストの開発を進める。現在、全てのサブタイプを用いて結合親和性を評価できるアッセイシステムを構築しており、完了次第、候補化合物の評価を行う。
近年、創薬分野では、ドラッグリポジショニングの重要性が指摘されているが、天然物リガンドは一般的に多くの標的タンパク質と作用するため、標的探索からの新規活性探索が非常に有効である。これまで活性が報告されていない天然物リガンドに関して、標的タンパク質の探索から新規活性を見出す手法は、創薬科学におけるドラグリポジショニングに相当する。新規生物活性物質の枯渇が問題とされる昨今において、このような手法の有効性は大きく、今後検討に値する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] The jasmonate-responsive GTR1 transporter is required for gibberellin-mediated stamen development in Arabidopsis2015

    • 著者名/発表者名
      H. Saito, T. Oikawa, S. Hamamoto, Y. Ishimaru, T. Utsumi, J. Chen, M. Kanamori, Y. Sasaki-Sekimoto, M. Shimojima, S. Masuda, Y. Kamiya, M. Seo, N. Uozumi, M. Ueda, H. Ohta, A
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 6 ページ: 6095

    • DOI

      10.1038/ncomms7095

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Functional importance of the sugar moiety of jasmonic acid glucoside for bioactivity and target affinity2015

    • 著者名/発表者名
      M. Ueda, G. Yang, Y. Nukadzuka, Y. Ishimaru, S. Tamura, Y. Manabe,
    • 雑誌名

      Org. Biomol. Chem.

      巻: 13 ページ: 55-58

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Chemical Biology of Coronatine; the effect on the guard cell2015

    • 著者名/発表者名
      上田 実
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
    • 招待講演
  • [学会発表] 植物の生物現象を制御するジャスモン酸誘導体の新たな機能2014

    • 著者名/発表者名
      上田 実
    • 学会等名
      第51回植物化学シンポジウム
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2014-11-22 – 2014-11-22
    • 招待講演
  • [学会発表] 天然植物毒素コロナチンの気孔 開口作用解明を目指した植物孔辺細胞の in vivo ラマンイメージング2014

    • 著者名/発表者名
      江越脩祐、山越博幸、どど孝介、岩下利基、石丸泰寛、袖岡幹子、上田実
    • 学会等名
      第56回天然有機化合物討論会
    • 発表場所
      高知・高知大学
    • 年月日
      2014-10-05 – 2014-10-05

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公開日: 2016-06-01  

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