計画研究
海洋軟体動物アメフラシから単離されたアプリロニンAは、市販の抗がん剤を上回る抗腫瘍性を示す。本研究では、この化合物の強力な抗腫瘍性の作用機序を解明するために、活性発現に重要な標的生体分子を探索した。これまでの研究で、この化合物は細胞骨格タンパク質アクチンに結合し、その重合を阻害することがわかっていたが、構造活性相関研究や活性発現濃度の考察から、アクチン脱重合活性だけでは強力な抗腫瘍性が説明できなかった。今回、アプリロニンAをリガンドとする光アフィニティビオチンプローブを調製し、これを用いて生細胞から標的生体分子を探索した結果、アクチンの他に、別の細胞骨格タンパク質であるチューブリンがラベル化された。さらに、詳細に調べた結果、チューブリンとの相互作用は、アクチンが存在するときにのみ観察されることがわかった。アプリロニンAの官能基が一つ異なるだけの類縁体は、アプリロニンAの1/1000の腫瘍細胞増殖阻害活性を示さないが、これのプローブではアクチンが存在していても、チューブリンを標識できないこともわかった。アプリロニンAとアクチンとチューブリンの複合体について分子ふるいHPLCを用いて調査した結果、この複合体は、アプリロニンA:アクチン:チューブリンαβヘテロダイマーの1:1:1複合体であり、それらの結合定数KaはμMオーダであることがわかった。さらにアプリロニンA-アクチン複合体のチューブリンに対する作用を調べた結果、強くチューブリンの重合を阻害することがわかった。細胞に対する作用を調べた結果、分裂期の紡錘体の形成異常を引き起こし、細胞周期をG1/M期で停止させ、最終的にアポトーシスを引き起こすことが明らかとなった。これからは、三元複合体の構造と機能を明らかにしていく。
2: おおむね順調に進展している
標的タンパク質との結合から、細胞内で起こる一連の過程が解明できた。
高活性アナログかを進めるとともに、分子機構を解明する
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