研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
23102015
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西川 俊夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90208158)
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研究分担者 |
此木 敬一 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40292825)
安立 昌篤 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80432251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テトロドトキシン / サキシトキシン / 電位依存性ナトリウムチャネル / 阻害剤 / 有機合成 / サブタイプ選択的 / パッチクランプ法 / チリキトキシン |
研究実績の概要 |
TTX, STXのアナログ合成: (1)TTXアナログの合成:本研究者らが開発してきたTTXの第3世代合成法を活用してパナマ産ヤドクガエルから単離されたTTXの類縁体チリキトキシンの全合成を達成した。これは、世界初の全合成で、この合成によってNMR, MSの解析から決定されたこの化合物の構造が確定した。なお、この化合物は天然から単離されたTTX関連化合物のなかで唯一カリウムチャネルに作用することが報告されており、今後その活性評価を行う計画である。 (2)STXのアナログ合成:当研究グループによって開発されたブロモ連続環化反応によるSTX骨格の合成法を見直し、あらたな形式の連続環化反応によってSTXのスピロビスグアニジンの更に効率よい合成法を見いだした。今後、この方法を用いて、STXのアナログを供給する。一方で、 TTXのグアニジンと酸性を示すオルトエステルとが同じ空間的位置構造を有する海産天然物crambescin Bの全合成を計画し、ブロモ連続環化反応の応用によってそれを完成した。
Naイオンチャネル阻害活性測定: 発現用ベクターに組み込まれたヒトのhNav1.2, 1.4, 1.5, 1.6のcDNAを購入した。本遺伝子群はバクテリア中で毒性を示すため通常の形質転換、培養操作による増幅が困難である。そこで、こうした毒性の軽減が推定されているベクター(pCDM8)への移行を行った。Nav1.2について成功し、現在、Nav1.4について、それを検討中である。pCDM8への移行が完了したhNav1.2については、Hek293T細胞へトランスフェクションし、安定発現株の構築を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
化学合成によるテトロドトキシン、サキシトキシン類縁体合成は順調に進展しているが、ナトリウムチャネルのサブタイプ選択的阻害活性測定の評価系の立ち上げが遅れている。。市販の発現用ベクターに組み込まれたヒトのNav1.2, 1.4, 1.5, 1.6のcDNAをつかって、Hek293T細胞でのナトリウムチャネルの安定発現系の構築が予想外に困難であったためである。
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今後の研究の推進方策 |
TTX,STXのアナログ合成:昨年度に続いて、8-epi-TTX, 6-deoxyTTXの合成を進め、今年度行う予定の活性評価の結果をもとに、結合モデルを作成し、新たな阻害剤の分子設計を行う。 STX関連化合物の合成は、昨年度開発した新たな連続環化反応によるスピロビスグアニジン化合物合成法をつかって、STX類縁体を合成・供給する。 活性評価系の立ち上げ:Navの安定発現株を構築する過程で、pCDM8にクローニングされたヒトNav1.2遺伝子を用いてきたが、ヒトNav1.2の安定発現株の作成は困難であること、一方で、Nav1.4やNav1.5などが比較的安定発現株の構築に適したサブタイプであるという情報を得た。そこで、今後まずTTX結合型のヒトNav1.4に焦点を絞り実験を進めて行く予定で、現在、ヒトNav1.4遺伝子をpCDM8にクローニングする実験を行っている。また、安定発現株の選択を容易にするために、GFP発現ベクターをごく少量共存させてHEK293T細胞をトランスフェクションする予定である。
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