研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
23102016
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 誠 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (80235267)
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キーワード | ポリエーテル / イオンチャネル / 阻害剤 / 機能解析 |
研究概要 |
カリウムイオン(K^+)チャネルは、神経細胞、筋細胞等の興奮性細胞だけでなく、非興奮性細胞にも広く分布し、筋収縮、神経伝達物質の遊離、ホルモン分泌、細胞増殖などの多様な生理機能において重要な役割を果たしている。海産ポリエーテル天然物ガンビエロールは、マウスに対して強力な致死毒性を示し、電位依存性K^+チャネルサブタイプKv1及びKv3に対して選択的かつ強力な阻害活性を示す。本研究では、ガンビエロールの電位依存性K+チャネルに対する阻害活性発現に必要な最小構造単位をもつ活性単純化類縁体を開発し、詳細な機能解析を行うことを目的とし、イオンチャネルサブタイプ選択的阻害剤の合理的設計のための分子基盤の構築を目指した。 これまでの構造活性相関研究における知見を基にしてガンビエロール分子右側の構造を保持し、分子左端部を省略した4環性及び7環性類縁体を、独自に開発した鈴木-宮浦カップリング反応を基盤とするガンビエロール全合成法を活用して合成した。合成したガンビエロール及び構造単純化類縁体に対して、マウス小脳顆粒細胞を用いた電気生理実験を実施した。その結果、2種の構造単純化類縁体はいずれも、天然物と同等の電位依存性K^+チャネル電流阻害活性を示すことを明らかにした。また、神経芽細胞腫neuro2Aに対する細胞毒性試験においては、7環性類縁体のみが細胞毒性(IC_<50>値:0.45μM)を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である海産毒ガンビエロールの構造単純化類縁体の合成を達成し、予備的な生物活性評価(電位依存性カリウムイオンチャネルに対する阻害活性、神経細胞種に対する細胞毒性)を行った。これにより、ポリエーテル天然物の構造単純化類縁体が、天然物と同等のイオンチャネル阻害活性を示すことを初めて明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
電位依存性K^+チャネルサブタイプを恒常発現させた細胞系を構築し、電気生理実験による評価系の構築を行う。さらに、合成したガンビエロール及び構造単純化類縁体について、チャネルサブタイプに対する阻害活性を詳細に解析することにより、骨格構造と生物活性との相関に関する知見を得るとともに、さらなる構造展開によりチャネルサブタイプ選択的阻害剤の合理的設計のための分子基盤の構築を目指す。
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